なぜ雪の日は出発が遅れる?飛行機に液体をかける作業?のヒミツ
冬の空港。
飛行機への搭乗も終わり、シートベルトを締めてあとは出発を待つばかり・・というタイミング。
ふと窓の外を見ると、大きなアームを伸ばした作業車が飛行機に近づいてきて、何かの液体を勢いよく吹きつけ始めました。
白い湯気のようなものが立ちのぼり、液体が翼を伝って流れ落ちていく。
「あれ、何をしているんだろう?」
「というか、この作業のせいで出発が遅れてる・・?」
冬や雪の降る寒い日に飛行機に乗ったことがある方なら、一度は目にしたことがある光景ではないでしょうか。

結論から言うと、あの作業はいわゆる除雪作業の一環です。
そしてそこには、飛行機が安全に飛び立つために絶対に欠かせない理由があります。
ただ雪を落としているだけではないということなんです。
そこには2つの異なる目的があり、専用の液体が使い分けられていて、さらにはパイロットが機内から目視で効果を確認する仕組みまで用意されているんです。
冬のシーズンで、特に雪が降っているような日に飛行機の出発が遅れてしまいがちな理由も、この作業を知ると腑に落ちます。
この記事では、
・あの液体の正体と役割
・なぜ雪がついたままでは飛べないのか
・作業が2段階に分かれている理由
・翼にあるある目印の意味
・出発が遅れる本当の理由
を、順番に解き明かしていきます。
仕事柄、旅に関わる日々を送っている筆者としても、冬の空港で見られるあの光景は、
言ってみれば、「知らないと退屈な待ち時間、知っていると見入ってしまう時間」
だと感じています。
何をしているのかが分かるだけで、待ち時間の感じ方が一気に変わるかもしれませんし、冬のシーズンに飛行機に乗るのが楽しみになりますので、是非このまま読み進めてみてください!
あれは機体を洗っているのではありません

「除雪作業」と聞くと、道路や車の雪かきのような光景を思い浮かべるかもしれません。
シャベルやブラシなどで、積もった雪をどかしていく・・。
大変な作業ですよね。
ところが飛行機の場合は機体の特殊性など様々な事情から、道路の除雪と同じ感覚で除雪することは出来ないんです。

航空機の除雪は、ブラシなどのツールで機体の雪をさっと払うだけではない特殊な除雪が必要となります。
機体に付着した雪を除く為に使われるのはなんと80℃にも加熱された専用の液体。
駐機中の飛行機に煙のようなものが吹きかけられている光景を見ることがあると思いますが、まさにこれですね。
更に、ただ吹きつけて終わりではなく、その後にもう一種類、まったく別の液体も重ねてかけています。
なぜそこまでするのか!?
順を追って見ていきましょう。

除雪作業と専用車両
特に雪の日に見られる飛行機の除雪作業は、正式には防除雪氷(ぼうじょせつひょう)作業といいます。
機体に付いた雪や氷を取り除くだけでなく、さらに新たに雪や氷が付着しないようにするという目的をも備えた作業で、飛行機の除雪には欠かせない工程です。
ここで使われるのは防除雪氷液という専用の液体。
そしてその某除雪氷液の散布を専門に行うのが、一般にデアイシングカーと呼ばれる車両です。
デアイシングカーって、どんな車?

デアイシングカーは、まさに防除雪作業専用の特殊な車両です。
車両に付いているアームが上下左右に動いて、飛行機の上部にも届くくらい高い位置までもしっかり伸びます。
そして、アームの先端からは上述した防除雪氷液を散布!
その姿はまるで消防車のようにも見えます。
車体には約8,000リットルものお湯と防除雪氷液を搭載可能なそうで、アームの先端付近に備わる操作室ごと自由自在にアームが動かせる構造になっています。
航空機という巨大な構造物の隅々まで液体を届かせるには、これだけの装備が必要というわけですね。
ちなみにこのデアイシングカー、沖縄を除く日本全国の空港に配置されているのだとか。
雪が滅多に降らない地域の空港にも置かれているというのは、少し意外と感じる人もいるかもしれませんが、万が一降雪があれば、航空機の安全な運航の確保に不可欠な措置の為、そのような配置をされているのだと思います。
次の章では、なぜ雪がついたままでは航空機の安全な運航を確保できない?のか
もう少し深堀してみましょう。
航空業界では、飛行機を洗うことを機体洗浄と呼びます。
JAL公式サイトによれば、同社ではすべての飛行機を約90日のサイクルで洗浄しているそう。
驚くのはその方法で、なんと、最初から最後まですべて人の手。
使う道具は、なんと幅30cmほどのモップです。
大型機のボーイング777-300ともなると、13〜14人のチームで約4時間かけて磨き上げるのだとか。

パイロットの合言葉は「Keep it clean」

この章では、なぜ飛行機は雪が積もったままでじゃ飛んではいけないのか。
について触れていきましょう。
いきなりですが、その答えは、翼の形にあります。
飛行機が飛べるのは、翼が”特殊な形”をしているから
飛行機が空を飛べる理由をご存じでしょうか。
簡単に言うと、飛行機の胴体から左右に伸びる大きな翼(主翼)に正面から風が通る時に、主翼の特殊な形状により、空に浮かぶ方向に力(揚力)が発生するような風の流れを作り出すことが出来るのです。

ゆるやかに膨らんだ上面と、比較的平らな下面の翼。
あの曲線は、計算し尽くされた形なんですね。
細部まで計算された形状が飛ぶための力を生み出しているとすれば、
その主翼に少しでも雪や氷が付いてしまうと、翼の断面の形(形状)が変わってしまい、計算されている揚力の発生が大幅に低下してしまう。
わけです。

雪も氷も「大量に積もったら重くて破損してしまう可能性があるから危ない」ということではないんです。(※それももちろんありますが・・)
空を飛ぶために設計されている翼の「形状」が雪や氷によって少しでも変化してしまうことが危険なんですね。
「少しでも積もってはダメ。積もらせない」というのが飛行機の除雪の基本であり、除雪氷作業ということです。

計算されつくしたその姿を意識して眺めると違う感動があるかも
だから、合言葉は「Keep it clean」
そのためパイロットさんたちは、「Keep it clean」という言葉を冬期運航の大原則として意識し、機体に付着した雪や氷があれば完全に除去してから飛び立ちます。
「Keep it clean」とは、直訳すれば「きれいに保て」。
航空機整備の技術資料においても、このことが前提としてきちんと記載がされているのだとか。
「航空機の耐空性は、航空機表面が清浄な状態で保証されている」
飛行機が安全に飛べるのは、“機体の表面がきれいであること”を前提に成り立っているわけです。

雪や氷がついてしまった状態では、その前提が崩れてしまっている状態となります。

気をつけるのは翼だけではありません
ちなみに、雪氷を取り除く必要があるのは主翼だけではありません。
主翼以外でも次のような箇所の雪氷除去が求められます。
- 水平尾翼・垂直尾翼
- 各種の操縦面(機体を動かすための可動部分)
- エンジンの吸入口
- 速度や気圧を測るセンサー類

これらの箇所も主翼と同様、形状に影響を与えられてしまうと飛行に影響が出る可能性のある部分です。
このように、飛行機は機体の様々なところに、「綺麗な状態でなければならない場所」があるわけです。
ここで、記事の冒頭でお伝えした、
「ブラシでさっと雪を払ったりすればOKという除雪ではだめ」
の意味もはっきりしてくるかと思います。
表面をざっと払うだけでは足りない。
目に見えない薄い氷まで、確実に、そして機体を傷めずに取り除かなければならないのですね。
そして、そのために専用の除雪氷液と、それを効率よく満遍なく散布できる専用の車両が必要になるというわけです。
飛行機の除雪氷は2段階。「落とす」と「守る」

さて、ここからが本題です。
飛行機の除雪氷作業は、大きく分けると次のように性質の異なる2つの工程で構成されています。
- 除雪氷作業(デアイシング)・・機体に付いている雪や氷を落とす
- 防雪氷作業(アンチアイシング)・・飛行機の機体に雪や氷が付くことを防ぐ
- 英語で言うと「de-ice(取り除く)」と「anti-ice(防ぐ)」。
- 名前は似ていますが、目的も、使う液体も、かけ方もまったく違うんです。
それぞれ見ていきましょう!
第1工程「落とす」――80℃の液を、勢いよく
まずは、機体に付いた雪や氷を取り除く工程から。
ここで使われるのがタイプ1と呼ばれる除雪氷液です。
主成分はプロピレングリコールという物質で、これに水を混ぜて使います。
この液体を、なんと80℃に加熱して、高い圧力でまっすぐ勢いよく吹きつけるんです。
熱と勢いで雪や氷を一気に溶かして洗い流すということですね。
窓の外に白い湯気が立ちのぼって見えるのは、この熱い液体のためです。

家や車の除雪では、基本的にはお湯を使うことはNGなので、なんとなく不思議な感覚もしますが、特殊な専用の液体ですから、お湯と違ってそのまま凍り付いてしまうということがないのでしょう。

第2工程「防ぐ」――とろみのある液で、膜をつくる
ここまで紹介してきた通り、飛行機の除雪氷は機体の雪をきれい落としたただけでは終わりません。
なにしろ、いくら雪を落としたところで、空港に雪が降り続いている中では、例え短い時間であっても、地上を走行し離陸するまでの間にまた雪が積もってしまいます。
こうなると、離陸に必要な揚力を得ることが出来ない恐れがあり危険です。
安全な離陸のためにも、雪が積もらず凍り付かせもしないという工程が求められます。
そこで登場するのが除雪氷液のタイプ4と呼ばれるもの。
とろみのある、粘り気の強い液体です。
かけ方も第1工程とは正反対で、低い圧力で、広い範囲に、流れ落ちないよう散布します。
目的は洗い流すことではなく、機体の表面に均一な膜をつくること。
しかもこの膜、1平方メートルあたり1リットルという量が要求されているそうです。
あの巨大な機体全体となると・・相当な量になりますよね。

この液、離陸の瞬間に”消える”仕組みでした
まず初めに雪や氷を取り除いて(第一工程)、次に、新たな雪や氷の付着を防ぐ(第二工程)というここまでの役割についてはなんとなく理解ができると思います。
ただ、ここで筆者は一つの疑問が浮かびました。
第二工程としての雪や氷の付着を防ぐ為の除雪氷液についてです。
粘性の高い膜を飛行機全体に膜のように付着させるということは、飛行機の主翼やその他可動部に液体の膜を張ることになるわけで、雪や氷ほどではないにしても、機体の構造に凹凸を生むことになるので、離陸に必要な揚力の発生の妨げになってしまうことにはならないのかな?と。
結論を先に言えば、当たり前といえば当たり前ですが、それは当然に計算された設計がされていました。
飛行機の機体全体に膜をつくる第二工程の除雪氷液タイプ4は、離陸のために滑走するその速度によって粘性を失っていき、自然と機体からすべて流れ落ちるように作られているのです。
離陸する直前までの間だけ、しっかりと雪や氷の付着を防ぎ、不要となる段階に向けて自然と役目を終えて消えていく。
設計思想そのものに感心してしまいますね。

飛行機の窓から外の除雪作業を眺めているときに、是非、防除雪氷の液体の色に注目してみてください。
実は防除雪氷液には、国際的な基準で色が決められています。
- タイプ1(落とす液)・・オレンジ色
- タイプ4(守る液)・・緑色
色をつける理由は、どこに散布されたかが一目で分かるようにするため。
作業する人にとっても、コックピットのパイロットにとっても、目で見て確認ができることが安全につながります。
この有色の液体が国際基準として制定されたのは2018年のこと。
欧米では以前から色つきの液が使われていましたが、日本では2023年度に新千歳・成田・羽田・中部・関西の5空港から切り替えが始まり、その後ほかの空港へも順次広がっていきました。
日本の空港で色つきの液体を見られるようになったのは、ここ数年の話なんですね。

オレンジ色が見えたら「今は雪や氷を落とす作業だな」、緑色に変わったら「仕上げのコーティングだな」
・・そんな見方ができると、待ち時間も楽しくなりますね!
さて、ここまで、飛行機における除雪作業の内容を紹介してきました。
私達乗客が飛行機の中の窓からこの作業を眺めているとき・・
実はもうひとり、同じく翼をじっと見つめている人がいるのをご存じでしょうか。
作業が終わったら、パイロットが自分の目で確かめます

デアイシングカーが離れていき、防除雪氷液体の飛行機の機体への散布が終わりました。
・・さあこれで出発!
と思いきや、まだ終わりではありません。
本当に雪や氷が取れたのか?
防雪氷液はしっかり散布されているか?
を確認する必要があるからです。
勿論、散布作業をしているデアイシングカーの地上作業員さんによる確認はなされています。
ですが、他にも飛行機の機体全体に責任を持ち、除雪氷の状態も確認する必要のある人がいます。
その役目を担っているのが――飛行機を飛ばす、機長、パイロット自身です。
確認は、各国の規制当局が求める手順
離陸前、機長には機体の重要な表面に凍結した汚染物が残っていないことを確認する義務があります。
これは航空当局の規則で定められた、れっきとした手順というわけです。(※国によって規制や当局の名称は厳密には異なります)
「作業員さんや整備員さんなどの別の誰かが確認してくれたから大丈夫だろう」
・・で済ませては駄目なんです。
最終的な責任はその飛行機を飛ばす機長にある為、必ずパイロット(機長)自身の眼で確認するというわけですね。

他の業界と同じく、航空業界においても安全に対する姿勢や取り組みは極めて高いです。
「~だろう」や「多分・・だと思う」という考え方は厳に禁止されています。
そういった曖昧な根拠で何かを判断するようなことをしないように、しっかり指導されます。

やっかいなのは、目に見えにくい氷
この作業の中で特に厄介なのが、透明な氷の存在です。
真っ白な氷なら誰が見ても「そこにある」ことが分かります。
でも、薄く張った透明な氷は、濡れた翼との区別がつきにくい。
しかも機体は大きく、特に、翼の部分は高い位置にあるうえに、その構造上、地上からでは直接視認することも困難です。
もちろん、地上から手を伸ばして実際に触ってみて確かめる、なんていうわけにもいきません。
実際、航空安全の報告事例を分析した資料には、翼や尾翼の高さが点検を難しくしているという指摘や、除氷作業の後も重要な表面に氷が残っていた事例が報告されているようです。

だから、機内の窓から翼を見ています
ではどうやって確認しているのか。
その方法はシンプルで、機内の窓から翼の除雪状態を見るというもの。
多くの航空会社が、この方法で確認を行うことについて航空当局の承認を得ており、点検のフローとして正式な工程となっています。
私達乗客が窓から作業を眺めているまさにその時、同じ機内の別の場所でも、同じように翼を見つめている人がいるということです。

見えにくいものをいかに見落とさないようにするか。。
難しい仕事です。

なぜ出発が遅れる場合があるのか?
――答えはホールドオーバータイム

ここまで読んでいただいて、こう思った方もいるかもしれません。

作業の大切さはよく分かるんだけど、専用の車両で液体を噴射するのであれば、作業としては一気に終わらせられるようなイメージがある。
飛行機が出発するまでの待機時間内にすっかり終わらせることが出来そうにも思えるけど、この作業が原因で出発が遅れたりしてしまうことがたまにあるのは何で??
この疑問に対する答えがこの章のテーマです!
ここまで紹介してきた除雪氷の専用液は、効果を維持できる有効期限があるんです。
除雪氷液には「有効時間」が設定されている
機体に吹きつけられた防雪氷液、その効果は先に紹介してきた通りですが、その効果が永遠に効き続けるわけではありません。
時間が経てば徐々に効果が薄れていき、また機体には雪が積もり始めてしまいます。
除雪氷液の種類や、その時の気温、降雪の強さといった外の環境によって変動する為、それらの状態を鑑みたうえで、散布された除雪氷液の効果が持続すると予測される時間を、ホールドオーバータイムと呼びます。
国土交通省の通達では、こう定義されています。
「飛行機に散布された防除雪氷液によって、機体表面への氷や霜の形成及び雪の堆積を防止することができる予測時間」
冬、雪が降りしきる空港で、この除雪氷液が散布されるような状況にある場合、その効果が持続している時間内に空港から飛び立つ必要があります。

除雪氷作業が終わった瞬間から、離陸までの間、有効時間という名の砂時計がひっくり返っているわけですね。
「液体をかけたから安心」ではなく「かけた瞬間からカウントダウン開始」・・なかなかシビアな世界です

本文中でも少し触れていますが、この防除雪氷液の有効時間(ホールドオーバータイム)は、実は一律には決まっていないんです。
・使用した防除雪氷液体の種類(製品)
・外気温
・積雪の強さ 等
このように、その時の条件や状況によって変動します。
なんでも、専用の一覧表(のようなもの)が用意されていて、その日その時の条件に当てはめて有効時間を確認出来る仕組みとなっているのだとか。
例えば、1メートル先も見えないような大雪が激しく降っている状況であれば、当然有効時間は短くなりますし、逆に穏やかな降雪のような状況であれば相対的に効果時間は長くなります。

ホールドオーバータイムは「予測時間」にすぎないため、、
ホールドオーバータイムは、あくまで予測です。
しかも飛行機のパイロットは、常に機体表面を間近で確認し続けることが出来るわけではありません。
その為パイロットは、空港内の降雪状況や外気温の変化を見張りながら、定められているホールドオーバータイムを目安にして、効果が持続する時間内で離陸が出来るかどうかという判断を行います。
この時、防除雪氷液の散布時から気象状況が変わるなどやその他何らかの理由によって、ホールドオーバータイム内の離陸が難しいとパイロットが判断した場合――
駐機場に引き返して、もう一度はじめから防除雪氷作業をやり直します。
比較的大きめの空港では、滑走路の手前まで進んでから、前の飛行機が離陸するまで滑走路手前で順番を待ち続けるという光景は割とよく見られますよね。
これが雪の降りしきる空港だとしましょう。
待機している間も刻一刻と時間は経っていきますので、その状態でホールドオーバータイム内の離陸が間に合わないところまで時間が経過してしまうこともありえます。
そうなると、いくら滑走路の目の前にいたとしても、駐機場まで引き返すことになります。
そして、一から防除雪氷作業を行います。
遅延の理由は厳密にはもう少し色々ありますが、この事情による出発の遅れが往々にして発生します。
乗っている私達からすれば、出発の遅れは今後の予定に影響を与えてしまう場合もあるでしょう。
でもこれは、「ホールドオーバータイムに間に合わなければ必ずもう一度やり直す」という、安全を第一に据えた判断が当たり前に出来ている、ということです。


ホールドオーバータイムは多少超えているが、まあ多分大丈夫だろう!!
なんていう根拠のない予想で、安全をないがしろにされることの方が遥かに恐ろしいことだと筆者は感じます。
クリーン・エアクラフト・コンセプト

最後に、この一連の仕組みを貫いている考え方をご紹介します。
国土交通省の通達に、クリーン・エアクラフト・コンセプトという言葉が出てきます。
その意味は、端的にいえばこうなります。
「機体の表面(重要な部分他)に、氷、雪、霜が堆積又は付着したままで離陸をしてはならない」という概念
基本的な概念であり、原則として例外はありません。(※飛行機の機体設計上、安全が確保されている場合を除きます)
「少しくらいなら」も「急いでいるから」もない、ということですね。
国土交通省の公式リンクも貼ります。
ページ数が多く全て見るのは大変ですが、一番最初のページに、クリーンエアクラフトコンセプトやホールドオーバータイムの定義が書いてあるので、是非ご覧になってみてください。

まとめ:あの数十分は、無事に着くための時間

ここまで読んでいただきありがとうございます。
最後に、この記事の内容を振り返っておきましょう。
- 冬の空港で飛行機にかけている液体は、防除雪氷液。
- 専用のデアイシングカーが散布しています。
- 飛行機の翼は少しの雪や着氷でも形が変わる恐れがあり、揚力が大きく落ちてしまう。
- だから「Keep it clean」が冬の大原則
- 防除雪氷作業は大きく2段階。
- 80℃のタイプ1で落とし、とろみのあるタイプ4で守る。
- タイプ4は離陸の滑走で粘り気を失い、飛び立つ瞬間に流れ落ちる。
- 作業後はパイロット自身が、機内の窓から翼などを確認する。
- 防除雪氷液の効果にはホールドオーバータイムという期限があり、超えそうなら引き返してもう一度最初からやり直す
「遅れている」のではなく「整えている」
冬の空港で足止めされると、どうしても気持ちが急いてしまいがちです。
乗り継ぎは大丈夫だろうか、約束の時間に間に合うだろうか・・。
でも、窓の外で起きていることが分かると、視点や感じ方が変わるかもしれません。
翼の形を取り戻し、新たな雪から守り、パイロット自身も自分の目で確かめ、そして制限時間の中で安全に飛び立つ。
そのどれか一つでも省いてしまうと、安全は保証されないわけですね。
次の冬は、窓側の席がおすすめです
次に冬の空港で、実際に防除雪氷作業に出会うことがあったら、少し足を止めて是非窓の外の光景を眺めてみてはいかがでしょうか。
オレンジ色の液体が勢いよく翼を洗い流していく。
続いて緑色の液体が、ゆっくりと機体を包んでいく。
作業車が離れ、しばらくの静けさのあと、エンジンの音が高まっていく。
「何をしているんだろう」だった光景が、「今はこの工程だな」に変わる。
意味が分かると感じ方も変わります。
冬の旅には、冬にしか見られない景色があります。
冬にしか見られない景色だと思えば、待ち時間さえも楽しめるようになるのではないでしょうか。
楽しい旅を!!




