温泉は古くから日本人に愛されてきた癒しの場であり、心身のリフレッシュや健康促進に効果があるとされています。
温泉は、効能や泉質の違いなどで沢山の種類が存在しています。
色々な温泉の中に「源泉かけ流し温泉」という言葉があります。
この「源泉かけ流し」という言葉、温泉が好きな人もそうでない人も一度は聞いたことがある言葉ではないでしょうか。
さて、聞いたことはある言葉であっても、その正確な意味を問われると答えられないという人もいると思います。
そこでこの記事では、「源泉かけ流し」温泉の意味について紹介していきます。
源泉かけ流しという言葉とよくセットで使われる「天然温泉」などの似た言葉との意味の違いや、源泉かけ流し温泉の魅力についても紹介していきます。
最後には日本国内の源泉かけ流し温泉をいくつか紹介しますので、この記事を参考にして温泉の新しい魅力を見つけて、旅と温泉めぐりをより楽しんでいきましょう。
そもそも「温泉」とは
「温泉」と聞くと何を思い浮かべるでしょうか。
岩で出来た浴槽に絶景の山々を臨む露店風呂、檜の大きな浴槽に高い屋根、浴槽の中は熱いお湯、併設されている脱衣所には籠が並び、扇風機と洗面台、体重計が置いてあって、、と、思い浮かべる光景はなんとなく近い方が多いのではないでしょうか。
私達が旅などで普段から親しんでいる「温泉」は、温泉法という法律によって意味が決められています。
具体的には、温泉法において次のように定義されます。
第二条 この法律で「温泉」とは、地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、別表に掲げる温度又は物質を有するものをいう。
別表はここでは割愛しますが、別表を読むと、『地中からゆう出する温水、鉱水及び水蒸気その他のガス(炭化水素を主成分とする天然ガスを除く。)で、摂氏25度以上又は別表に記載されている物質を含むもの、とあります。
つまり、地中からゆう出する温水などで25度以上であれば、「温泉」として定義することが出来るんです。(※25度以下であっても、別表に記載されている成分が規定の数値以上含まれていれば温泉と言うことができます。)
ちなみに、具体的にどのような成分が温泉の条件となっているのかを知りたい方は、環境省のホームページで温泉法の別表を載せて説明してくれていますのでご参照ください。
天然温泉と源泉かけ流しの違い
温泉の定義が分かったところで、次は「天然温泉」と「源泉かけ流し温泉」について紹介していきます。
「温泉」が温泉法で明確に定義されていたのと異なり、「天然温泉」と「源泉かけ流し温泉」は温泉法による定義はされていません。
つまり、「温泉」の条件さえ満たしていれば、その温泉を「天然温泉」とするか「源泉かけ流し温泉」とするかは、少なくとも法律上に決まりはないのです。
とはいえ、一般的にはどちらの言葉もそれぞれがきちんと意味を持っています。
天然温泉とは?
定義
天然温泉は文字通りの意味で、温泉法で定めている「温泉」の条件を満たしているお湯(施設)のことを指します。
より分かりやすくするという目的で、天然温泉と別に「人口温泉」というものがある、と言えばイメージがわきやすくなると思います。
天然温泉が「地中からゆう出している25度以上もしくは法律で指定されている成分を含有しているもの」であるのに対し、人口温泉の場合は「地中からゆう出していないお湯等に人口的に温泉成分を加えたもの」を指します。
天然か人造か、ということですね。
ところで、天然温泉は温泉法において温泉として認められているお湯ですが、それが必ずしも地中からゆう出(湧いている)している温水のみで構成されているというわけではありません。
普通の水やお湯を追加して温度や全体の量を調整していたり、温水を循環していたりという追加の工程を含む場合もあります。
天然というからには、こういった工程の有無も影響を与えるような気がしないでもありませんが、これらの有無は「天然温泉」であるかどうかに影響しないです。
最初に記載した通り、あくまでも温泉法で定めた条件に適合しており、温泉として認められるのであれば、他に何の過程を加えたとしても「天然温泉」であることは変わらないです。
ここまで読んでいただければ分かるのですが、そうなんです。
「温泉」と「天然温泉」、どちらも定義(というか意味するもの)は同じなんです。
どうやら、「人工温泉」という言葉と比較して、「天然温泉」と表記する方が、印象として良いということから使われ出したという経緯があるそうです。
確かに、ただ「温泉」と表記するよりも「天然温泉」と書いた方が、なんとなく有難さというか貴重さというか、受ける印象が少し変わってくる気はしますね。
日本温泉協会の公式ホームページで説明されていますので引用させていただきます。
1.温泉
日本では温泉は「温泉法」によって定義されています。地中から湧出するときの温度が25℃以上であるか、温泉法第2条別表に掲げられている19種類の物質のうち、1つ以上規定値を満たせば温泉法上の温泉となります。また、地中から湧出する水蒸気およびその他のガス(炭化水素を主成分とするものを除く)も温泉に該当します。
2.天然温泉
温泉法の温泉と同様の定義で、人工温泉等の温泉法上の温泉以外のものと温泉法上の温泉の違いを明確にするため、昭和51年に(社)日本温泉協会が天然温泉表示制度を策定しました。用語としては、それ以前から使われていたこともあるようです。
一般社団法人 日本温泉協会公式ホームページより引用
公正取引委員会では、平成15年に温泉の表示についての実態調査を実施し、温泉という表記と比較して「より自然度が高いという印象を与える」強調的な表示であると指摘しています。
天然温泉の標示
温泉法では、天然温泉と呼ぶことが出来る条件を備えた「温泉」を設置する場合、泉質など決められた情報を表示(掲示)することを義務づけています。
これを受け、日本天然温泉協会という組織が「天然温泉マーク」と「天然温泉表示看板」という認定証(のようなもの)を策定しています。
温泉が好きな方は温泉施設等でも直接見たことがあるのではないでしょうか。
尚、この温泉表示看板は天然温泉の成分や効能などを示すだけではなく、上述した通り、天然温泉に対して加水や加温している場合、循環させている場合など、追加の工程を加えている場合には、それらの内容も表示してくれています。
加水や循環などの追加工程が存在するとしても、この天然温泉表示看板が掲げられているのであれば、環境省や温泉協会で正規に天然温泉として認定されているお湯であり、その効能は保証されていると考えてよいでしょう。
■天然温泉で行われる代表的な追加工程について
ここに記載されている工程等を行っている温泉施設も多くあります。
温泉法で温泉として認められている温水であれば、それはれっきとした「天然温泉」です。
加温:源泉を湧出温度以上に熱して浴槽に注ぐこと。
ボイラーや熱交換器を使用して源泉を直接加熱する方法や、
温水や熱水を直接源泉に加える方法などがあり、
温泉の温度を調整します。
加水:水道水、井戸水、湧き水、河川水、湖の水、海水などを源泉に加えたうえで浴槽に注ぐこと。これにより温泉の総量を調整します。
循環:ポンプなどを使って浴槽のお湯を浴槽外に汲み出し、汚れやゴミ等を途中で濾過器などで除去したり、消毒を加えたりすること。一定の量を維持する為、循環の途中で加水や加温をする場合もあります。
源泉かけ流し温泉とは?
定義
源泉かけ流し温泉とは、一般的には、地中から湧出している「温泉」を浴槽へ入れたら、その後も永続的に温泉を浴槽へ流し続ける形式の温泉のことを指します。
9.源泉かけ流し
浴槽に常時新湯を注入して溢流(オーバーフロー)させ、溢流した温泉を再び浴槽に戻して再利用しない「かけ流し」の状態で、注入する新湯については温泉を利用しなければなりません。また、単に「かけ流し」と謳うよりも自然の状態に近い印象を与える強調表示であるため、温泉へ加水することは出来ないことになっています。(以下略~)
一般社団法人 日本温泉協会公式ホームページより引用
地中から湧出した温泉を常時浴槽の中へ入れ続けるのが「源泉かけ流し温泉」の一般的な位置づけなので、原則として、水やお湯を加えるということはありませんし、温度調整の為に加温することもありません。
加水や加温がなく、地中から湧出した状態のままの温泉だけで100%満たしているのが「源泉かけ流し温泉」と呼ぶことの出来る施設です。
ところが、この「源泉かけ流し温泉」という言葉には注意が必要な面もあります。
実は、「温泉」が温泉法で定義されているのと異なり、「源泉かけ流し」は法律などで明確に定義がされているわけではありません。
先に紹介させていただいた「源泉かけ流し」の説明(定義)は、一般社団法人日本温泉協会が定めている定義です。
「源泉かけ流し温泉」の定義は法律で定められていない
「源泉かけ流し温泉」という言葉は温泉法では定義されていません。
一般社団法人日本温泉協会が定める定義が一般的な指標といえるとは思いますが、それでも、各都道府県市町村などの各自治体や温泉施設によって異なる扱い(認識)をしています。
例えば「温泉の成分変化が少ない」という観点から、源泉かけ流し温泉としてうたっていながらも、「加水」や「加温」を実施している都道府県市町村や施設もあります。
ただその場合であっても、温泉であれば、温泉法により【「天然温泉」の標示】で紹介した通り、加温や加水している事実とその理由を掲示しなければならないことになりますが、「源泉かけ流し」という表現を使用することには全く問題ありません。
ただ、このような状況だから?か、源泉かけ流し温泉についての疑義は全国で発生しているようです。
独立行政法人国民生活センターで解説されています。
嘘を標示するのは勿論ダメですし、嘘でなくとも、利用するお客さんに誤解をさせかねないといった表記などについては公正取引委員会など公的機関が是正に働きかけているという状態にあるようです。
折角利用させてもらうなら、事前にある程度はその施設の温泉についての情報も確認してみることが大切かもしれません。
源泉かけ流し温泉の魅力
源泉かけ流し温泉の魅力!(※筆者の個人的な感覚に基づきます)
・加水や加温がされておらず、温泉本来の泉質を楽しめる。
温泉の成分や温度が湧出したそのままの状態で供給されるため、温泉の成分が増減することが少なく、その温泉の効能を得やすいと言われているようです。
肌のトラブルや関節痛、疲労回復など、さまざまな健康効果が期待できる、、そうですが、筆者個人の感覚としては、必ずしも源泉かけ流しでなくとも「温泉」であれば一定の効果はあると思ってもいます。
・ちょっとだけリッチ(贅沢)気分で?入浴が出来る。
これも完全に筆者の個人的な感覚になってしまいますが、源泉かけ流し温泉は源泉から直接お湯が供給されていて、減ったお湯の分も湧出した源泉で満たし続けている為、なんとなく贅沢な気持ちになってしまいます。
源泉にそのまま浸かっているということを考えると、まるで大自然の中にいるような開放感や贅沢感を味わえてしまいます。(ちょっと考えすぎかもしれませんが。。)
天然温泉と源泉かけ流しは、温泉の性質や利用方法などで異なる点があります。以下では、それぞれの特徴と違いについて天然温泉と源泉かけ流しは、それぞれ異なる特徴を持ちながらも、自然の恵みである温泉を楽しむための方法です。温泉好きの方は、自分の好みや目的に合わせて選ぶことができるでしょう。
源泉かけ流し温泉のメリットやデメリット
■温泉本来の泉質を楽しめる
「魅力」と重複してしまいますが、源泉かけ流し温泉は常に湧出した源泉で満たされている為、新鮮な状態のお湯を楽しむことが出来ます。
その温泉の持つ成分や色、香りや肌触りなどを自然な状態そのままで心行くまで楽しむことができます。
加温や加水をしている源泉かけ流し温泉も存在しますが、そういった場合であっても、極力、温泉成分に変化が起こらないような程度であることが大半なので、余程のことがない限りはあまり気にしなくても良いと思います。
■温度調整が難しい
地中から湧出した源泉をそのまま浴槽へ注入している為、基本的には温度の調整が出来ません。
源泉の種類によって温度が非常に高い場合や逆に少し温い場合もあります。
ただ、温度も含めてその地方の源泉の特徴であると考えてあげれば、その高すぎる(または低すぎる)温度も含めてその温泉の人となりである、と捉えて好きになれるのではないかな、、と個人的には思います。
■浴槽内の循環の過不足
地中から湧出した源泉のみを常時注入し続ける為、常に浴槽内のお湯は入れ替わっているのですが、源泉によって湧出量が異なる為、源泉によっては湧出量が少なく、結果として浴槽内のお湯の入れ替え速度が遅いという場合もあります。
ただ、そういった源泉の場合の温泉施設は、基本的には常に一定以上の衛生状態を保つために定期的な清掃等を実施していますので、不衛生な状態が続くということはないと考えてよいでしょう。
全国にある源泉かけ流し温泉
ここまで、源泉かけ流し温泉の魅力や特徴を紹介してきました。
そんな魅力ある源泉かけ流しの温泉を実際に楽しんでいただきたいという思いから、全国津々浦々に存在する源泉かけ流しの温泉施設をほんの一部だけですがご紹介します。(※順不同、筆者の完全なる独断と偏見です。)
次の旅の目的地選びの際の取っ掛かり情報として参考にしていただければ幸いです。
北海道|登別万世閣
- 源泉:酸性-含硫黄-鉄-単純温泉(硫化水素型)
- 特徴:硫黄泉の独特なにおいを楽しみながら、日々の疲れを癒すことができる。日帰り入浴も可能。
福島県|YUMORI ONSEN HOSTEL
- 源泉:アルカリ性単純温泉
- 特徴:アルカリ性の泉質であり、「美肌の湯」としても人気。バリアフリー対応の貸切風呂もあり。
岩手県|鉛温泉 藤三旅館
- 源泉:アルカリ性単純高温泉
- 特徴:館内すべての浴場が源泉100%かけ流しで、シャワーから出る水も源泉。「白猿の湯」は源泉湧出しているその場所がそのまま浴槽。
神奈川県|横浜天然温泉SPA EAS(スパ イアス)
- 源泉:ナトリウム-塩化物温泉
- 特徴:横浜駅より徒歩5分というアクセスの良さに加え、スパ施設としてサウナや岩盤浴など多彩な施設が揃う。
注意:公式HPを開くと音楽が流れます
埼玉県|杉戸天然温泉 雅楽の湯(うたのゆ)
- 源泉:ナトリウム-塩化物温泉
- 特徴:美しい緑に囲まれた露天風呂や足湯が魅力で、地場産食材を生かした食事も楽しめる。
山梨県|より道の湯
- 源泉:ナトリウム・カルシウム・硫酸塩泉
- 特徴:泉質は血行促進や切り傷などに効果が期待できるもの。サウナの種類も豊富。
長野県|地蔵温泉 十福の湯
- 源泉:アルカリ性単純泉
- 特徴:標高975m、広大な敷地の中で四季折々の自然と温泉を楽しめる。長野県最大の露天風呂と、こだわった食事も魅力。
愛知県|天然温泉 かきつばた
- 源泉:塩化物泉
- 特徴:塩分が肌に付着することで湯上がり後でも湯冷めしにくいため、別名「熱の湯」。高速道路のPA直結というアクセスの良さも〇。
岐阜県|土岐よりみち温泉
- 源泉:アルカリ性単純温泉
- 特徴:土岐市内を一望できる露天風呂にサウナも充実。超炭酸温泉は是非体験したい。
兵庫県|有馬温泉 太閤の湯
- 源泉:含鉄強塩泉 他
- 特徴:和風な雰囲気に包まれた温泉テーマパークで、6つもある種類豊富な露天風呂も魅力。珍しいハンガリー発祥の冷気浴施設「ソルトピット」もあり。
大阪府|天然露天温泉スパスミノエ
- 源泉:低張性弱アルカリ温泉
- 特徴:自然を活かした多数の温泉があり、ジェット噴射がすさまじい「うきうき風呂」はどんな人でも浮き上がると人気のお風呂の一つ。
愛媛県|伊予の湯治場 喜助の湯
- 源泉:アルカリ性単純弱放射能泉 他
- 特徴:バラエティに富んだ個性的な温泉、西日本最大級の炭酸泉も魅力。
山口県|西ノ市温泉「蛍の湯」
- 源泉:アルカリ性単純温泉
- 特徴:奥に広く入り組んだ駅舎が魅力の昔ながらの農村集落をイメージした「道の駅」の施設。とろとろとした肌ざわりが心地よい弱アルカリ性の泉質で、なめらかでつるつるの美肌が期待できる。
佐賀県|佐賀大和温泉ホテルAmandi(アマンディ)
- 源泉:含二酸化炭素-カルシウムマグネシウム-炭酸水素塩泉
- 特徴:療養泉として知られる炭酸泉が豊富で、心臓病や神経痛に効果的。
沖縄県|ユインチホテル南城 天然温泉さしきの猿人の湯
- 源泉:ナトリウムー塩化物強塩泉
- 特徴:温泉ソムリエがいる施設。昼は太平洋の絶景、夜は南城市の夜景と星空の抜群の眺望。沖縄県内では珍しい肌の保湿効果の高い温泉で美容にも効果あり。
まとめ
この記事では、天然温泉と源泉かけ流しの言葉の紹介と、日本全国の源泉かけ流し施設をいくつか紹介しました。
それぞれに独自の特徴や魅力があり、源泉かけ流しならではの泉質や効能を楽しむことができる温泉施設です。
勿論、ここで紹介させていただいたのはほんの一部でしかなく、素晴らしい温泉は日本全国にまだまだ沢山あります。
旅の目的地を探している最中などで温泉施設のHPを見る時は、是非「温泉」を紹介しているページも覗いてみてください。
いつかきっと、貴方にとって一番のお気に入りとなる温泉と巡り合える時が来ると思います。
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