【世界の空港】人の名前が付けられた空港たち

空港

世界には様々な国や地域があります。
その国の持つ長い長い歴史や、その国で暮らす人達の価値観や色まで、その国のことを豊かに肌で感じられるのが旅の醍醐味の一つです。
そして、旅先でそういったものを感じられる場所の一つに「空港」があります。
その国と他の国とを結ぶ玄関口である空港は、その国が持つ特徴や空気感などを感じられるような場所となっていることが多いんです。
そんな海外の空港に目を向けると、有名人や歴史上の偉人などの方の名前を付けている場所があることが分かります。
日本ではあまり馴染みのない文化といえますが、そんな慣習それ自体が、その国で暮らす人々が長い歴史の中で形作っていった考え方や物の見方であるともいえますね。
この記事では、世界にある様々な空港の中から「人の名前を冠した空港」に焦点をあて、ほんの少しだけですがピックアップして紹介していきたいと思います。

人の名前を冠した世界の空港

海外で人の名前を冠している空港をいくつか紹介していきます。
ただし、アメリカだけ見ても人の名前を冠した空港は、元大統領や軍人から市長などの公職、音楽など様々な業界の著名人まで本当に沢山の数が存在しています。(本当に多いです!)
流石に全てを紹介することは出来ないので、数多あるそれらの中から、あくまでも著者である私の独断と偏見によって(ほんの少しですが)何個か選んで紹介させていただきます。

ジョン・F・ケネディ国際空港(アメリカ)

ジョン・F・ケネディ国際空港の上空写真
~ウイキペディア「ジョン・エフ・ケネディ国際空港」より引用 User:KenzieAbraham – Own work~

空港の概要

最初に紹介するのは、アメリカはニューヨークのジョン・F・ケネディ国際空港。
アメリカを代表する国際空港の一つと言われるのも、50か国以上もの数の世界の国から航空会社で100社を超えるほどの数が乗り入れていると聞けば納得です。
国内の定期便路線だけでも1日で1,000便に届くほどの就航数で、世界中で最も忙しい空港なんて呼ばれることもあります。
滑走路は4本、ターミナルビルに至っては6つも備えた巨大な空港で、その面積は2,000ha以上と、日本の成田空港の2倍近くあります。

第1ターミナル
~ウイキペディア「ジョン・F・ケネディ国際空港」より引用~
第4ターミナル
~ウイキペディア「ジョン・F・ケネディ国際空港」より引用~

名前の由来

ジョン・F・ケネディはアメリカの第35代大統領で、魅力的なルックスと戦略的な才能で知られており、テレビ・ディベートの時代を巧みに戦い抜きましたが、1963年11月に暗殺されてしまいます。
その同年12月、そんなジョン・F・ケネディ大統領の偉業や栄誉を讃え、空港の名前が今の名称へ変更されました。

実は、ジョン・F・ケネディ空港は今の名前になる前の空港の名称は「アイドルワイルド空港」というものでした。
元々はアイドルワイルドというゴルフコースで、その一部を空港に転用したところから始まったのがその理由だったようです。
その後、今の巨大空港に向かって徐々に変わっていく空港史の中で、国際空港となった際には名称を「ニューヨーク国際空港」という名前にする方針だったのですが、これが既存の空港の名称と紛らわしいということから使用が見送られてしまいました。
その結果、暫定名称としてアイドルワイルド空港を冠していたのです。
そんな状況下でケネディ大統領の暗殺事件が起きてしまいました。
もしかすると、当時の空港関係者の人達は「今しかない。」「この空港(アイドルワイルド空港)がケネディ大統領の名を付けなくてどこの空港が名付けるのか?」という思いだったのかもしれませんね。

余談ですが、ケネディ大統領の名前を冠した施設は空港の他にもあります。
有名なところでは、フロリダにある「ジョン・F・ケネディ宇宙センター」や、ワシントンには総合文化施設の「ジョン・F・ケネディセンター」があります。
他にも、ジョン・F・ケネディ特殊戦センター・アンド・スクールという軍事関連施設や、アメリカ海軍の空母にも同大統領の名前を冠したものがあります。

シャルル・ド・ゴール空港(フランス)

シャルル・ド・ゴール空港の上空写真
~ウイキペディア「シャルル・ド・ゴール国際空港」より引用~

空港の概要

次に紹介するのは、ヨーロッパを代表する空港の一つ、フランスのパリにあるシャルル・ド・ゴール空港です。
フランスとしては最大規模の空港で、3つのターミナルビルに滑走路が4本備わる国際空港です。
空港の敷地面積は約3,200ha以上と非常に大きく、そのスケールの大きさに驚かされます。
※日本で一番面積が大きい東京国際空港(羽田空港)の面積が約1,500haほどです。

コロナ禍前の2019年度の年間利用旅客者数は7,500万人を超えていて、これはヨーロッパ全体の空港の利用者数で見ても2番目に多い数でした。

第1ターミナルの俯瞰写真
~ウイキペディア「シャルル・ド・ゴール空港」より引用
※Dmitry Avdeev – Dmitry Avdeev, duzik~
第2ターミナル
~ウイキペディア「シャルル・ド・ゴール空港」より引用

名前の由来

シャルル・ド・ゴールはフランスの第18代大統領の名前です。
シャルル・ド・ゴール空港の建設が始まったのは1964年ですが、この時のフランスの大統領がまさにシャルル・ド・ゴールその人でした。
当時の大統領の偉業を讃え、その名前が空港に付けられたというのがその由来ということです。

シャルル・ド・ゴールは大統領でありながら、「救国の英雄」と呼ばれるほどの軍人として、また、ノーベル文学賞の候補にもなっていたほどの一級の教養人としても、本当に様々な実績を持っている方です。
経歴などを詳細に書いていくと1つの記事だけでは終わらなくなってしまうので、詳細は割愛させていただきますが、20世紀最高のフランスの政治家の一人と言われるこの方をフランスで知らない人はいないのではないでしょうか。


フランス国民から絶大に愛された大統領なので、国内外でその名前を冠した施設(道路や橋も含む)が沢山生まれました。
代表的なところでは、シャルル・ド・ゴール広場(パリのエトワール凱旋門がある広場で、シャンゼリゼ通りの入口)や、シャルル・ド・ゴール橋(セーヌ川にかかる橋)などがあります。
大統領の名前を冠した施設があまりに多すぎる為に、ウイキペディアでも全てを載せることが出来ないほどです。

リバプール・ジョン・レノン空港(イギリス)

ジョン・レノン空港

空港の概要

イギリスのリバプールにはあの有名アーティストの名を冠した「リバプール・ジョン・レノン空港」があります。
先に紹介しました2つの空港と比較すると滑走路は1つで、かなりコンパクトな規模の空港です。
ターミナルが複数存在するような巨大な空港ではありませんが、その分、航空機への搭乗までの時間がスムーズに進むなど利便性が高く、また、館内にも飲食やお土産など一通りの施設がしっかり揃っており、空港全体に漂うセンスの高さや各種サービスの質の高さなどが利用者から高く評価されている空港です。
リバプール市内に近い立地の為、周辺の観光地へのアクセスが良好であるというのも利点の一つといえるでしょう。

名前の由来

世界を舞台に活躍した伝説的なロックバンドであるビートルズ。
その活躍ぶりはもはや説明不要なレベルであると思います。

ビートルズThe Beatles)は、1960年代から1970年にかけて活動したイギリス・リヴァプール出身のロックバンド、および20世紀を代表する音楽グループである。音楽誌『ローリング・ストーン』による「ローリング・ストーンの選ぶ歴史上最も偉大な100組のアーティスト」において第1位にランクインしており、経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルの統計算出に基づく「史上最も人気のある100のロックバンド」でも1位となっている。グラミー賞を7回受賞し、23回ノミネートされている。

ウイキペディア「ビートルズ」より引用~

この伝説的ロックバンドのビートルズで活躍していたメンバーの一人がジョン・レノンですね。
この空港は、ジョン・レノンの素晴らしく絶大な活躍を称えて名付けられました。
空港があるリバプールという町はビートルズの出身地として非常に有名な場所で、ビートルズを始めとして沢山の音楽家や音楽に関わる文化などを輩出しています。
ビートルズゆかりの施設などもあり、今も世界中のビートルズファンや音楽好きな人達が集う場所となっています。
このような町の事情を知ると、空港の名前にジョン・レノンの名前が付くのも納得出来るというものですね。

ちなみに、空港内にはジョン・レノンの銅像が立っており、空港の屋根には彼の曲「イマジン」の詩の一節が書かれているそうです。
リバプールの街の中でも空港でも音楽やビートルズを肌で感じられるようになっているので、好きな人にはたまらない空港といえるでしょう。

ボブ・ホープ空港(アメリカ)※旧名 【現在:ハリウッド・バーバンク空港】

ハリウッド・バーバンク空港

空港の概要

再びアメリカの空港です。
ボブ・ホープ空港は、アメリカはカリフォルニア州に設置されている空港で、ロサンゼルスの近郊に存在している4つの空港のうちの一つです。
滑走路は2本、ターミナルビルは1つと、施設的な面だけで言えば決して大規模な空港ではありません。
しかし、その立地の利便性の高さなどから就航路線は多く、ロサンゼルスの様々な名所に加えて、ユニバーサルスタジオハリウッドやワーナーブラザーズの撮影施設に近いという地の利によって、映画業界関係者からロサンゼルス観光者まで多くの利用者で賑わう空港です。

名前の由来

ボブ・ホープは、アメリカで有名な俳優でありコメディアンです。
プロボクサーから転身してコメディアンとして成功し、映画やスタンダップコメディ、戦争への慰問活動などで活躍した彼は長寿であることでも有名で、100歳までご健在でした。
100歳の誕生日にもちょっとした一言にユーモアを交えるなど、ユーモアセンスは生涯衰えることがなかったようです。
生涯で2,000以上の賞を受賞したことから、ギネスブックで「最も数多く受賞した喜劇俳優」として認定されている彼の栄誉を讃えて、空港の運営会社はその当時、空港の名前にボブ・ホープの名前を付けることを満場一致で決定しました。
ちなみに、ボブ・ホープ空港と改名する前の名前はバーバンク・グレンデール・パサデナ空港です。

当時、ある映画俳優の名前を冠した空港が現れたことを知った本人が冗談で「自分(ボブ・ホープ)の名前も空港に付けてもらいたい」と話したことがあったというエピソードがあります。
それは本人にとってみれば軽い冗談だったのかもしれませんが、その後の彼自身の活躍ぶりや俳優という立ち位置などを考えると、ハリウッドという土地に近いこの空港にとって、彼の名を空港の名前にするという結論に至ることは決して非現実的な話ではなくなっていきました。
「なるべくしてなった」といえるように思います。
※その後、2017年からは諸般の事情によって「ハリウッド・バーバンク空港」という名称に改名されています。

ジョン・ウェイン空港(アメリカ)

ジョン・ウェイン空港

空港の概要

まだアメリカの空港が続きます。
ここで紹介するジョン・ウェイン空港は、アメリカのカリフォルニア州ロサンゼルス近郊にある空港で、先に紹介した「ボブ・ホープ(現:ハリウッド・バーバンク)空港」と同じく、ロサンゼルス近郊に存在する4つの空港の一つです。
開港から100年近くが経つ歴史のある空港で、LCCと呼ばれる航空会社の多くが拠点としているのも特徴です。
アナハイムのディズニーランド(ディズニー・カリフォルニア・アドベンチャー・パーク)から近いことから、就航路線はほぼ国内線を中心としたものでありつつも、年間で1,000万人を超えるほどの利用者がいる空港です。
住宅地に囲まれた場所であり、空港の敷地面積はアメリカ国内では決して広いとはいえません。
滑走路も2本あるもののいずれも長さが短いため、大型の航空機の離発着には対応していません。
それでも年間の利用者数が1,000万を超えるというのは、ロサンゼルス近郊にある4つの空港の中ではロサンゼルス国際空港に次いで多い数字ですから驚きです。

名前の由来

ジョン・ウェインは先に紹介したボブ・ホープと同じくアメリカで有名な俳優です。
ジョン・ウエイン空港は今の名前になる前はオレンジ郡空港という名前でした。
そのオレンジ郡にあるニューボートという都市に住んでいたのがジョン・ウェインです。
ジョン・ウエインご自身の活躍は以下のリンクをご参照いただきたいのですが、その彼の活躍を称えて空港の名称を改名したのが名前の由来です。

ボブ・ホープとは友人関係であったそうですね。
ボブ・ホープ空港の名前の由来の中で、ボブ・ホープが「自分の名前を空港に付けてもらいたい」と冗談を話したというエピソードを紹介しましたが、その話のきっかけとなったのが、このジョン・ウエインさんとオレンジ郡空港の改名の出来事でした。

ティラナ国際空港<マザー・テレサ空港>(アルバニア)

ティラナ国際空港

空港の概要

最後に紹介するのはアルバニア共和国の首都ティラナの近郊にある「ティラナ国際空港」です。
正式にはティラナ国際空港ですが、マザー・テレサ空港という愛称もある空港です。
第二次大戦後に建設された空港で、アルバニアという国の歴史と共にその位置づけや規模を変えてきた空港ともいえます。
その後、国の変遷や空港全体の改修工事などの施策を受けて、今では年間で300万人を超える利用者がいる空港となっていて、国際空港の名の通り空の玄関口として様々な国と繋がる航空会社の路線が就航しています。

名前の由来

ノーベル平和賞を受賞したマザー・テレサの名前は、歴史や社会の授業などで1度は必ず聞くであろう名前だと思います。
マザー・テレサはアルバニアの人なので、そのこと自体もアルバニアの人達にとっての誇りであると考える人達がいて、彼女の功績を称えてその名前を空港の愛称として呼ぶようになったのだとか。
マザー・テレサ空港は正式な名称ではありませんが、彼女の行動を後世に永遠に語り継いでいきたいという人達の強い思いが現れているのでしょう。

人の名前を冠した日本の空港

ここまで、人の名前が付けられたり愛称として親しまれたりしている世界の空港をいくつか紹介してきました。
では、日本国内の空港で人物の名前を冠した空港はあるのでしょうか。
実は、いま(2024年5月現在)のところ、実在した人物の名前が正式な名称となっている空港は残念ながら国内にはありません。
ただし愛称としてであれば、人の名前を冠している空港は存在します。

高知空港(高知県)

高知空港(高知龍馬空港)

国内で唯一、実在した人物の名前を愛称としているのが高知空港です。
正式な名称は高知空港ですが、その愛称は「高知龍馬空港」
高知由来の歴史上の人物である坂本龍馬の名前を冠しているというわけですね。

鳥取空港(鳥取県)

鳥取空港(鳥取砂丘コナン空港)

実在した人物ではありませんが、漫画にアニメにと大活躍で今も昔も多くの人達に大人気なあの人物の名前を愛称としている空港が鳥取空港です。
その愛称は「鳥取砂丘コナン空港」といいます。
あの国民的人気漫画(アニメ)ともいえる名探偵コナン。その主人公の名前が空港の愛称となっているんです。

岡山空港(岡山県)

岡山空港(岡山桃太郎空港)

国内で最後に紹介するのが岡山県の岡山空港です。
愛称は「岡山桃太郎空港」
桃太郎はあの有名なおとぎ話の主人公です。
あまりに有名な話なので、もはや日本国内で知らない人はほとんどいないのではないでしょうか。
おとぎ話としては定番中の定番といえるでしょう。

少し横道にそれますが、日本国内の空港には色々な愛称が付けられています。
その中のいくつかを紹介した記事があるので、よろしければそちらもご覧になってみてください。

まとめ

世界に目を向けてみると、空港に限らず、道や建物なども含めて様々なモノに人の名前を付けるのが非常に一般的な慣習となっています。
そこには、芸能人としての著名人から政治家や国家元首まで明確な制限がありませんが、その土地にゆかりのある人の名前が選ばれる傾向にはあるといえます。
その土地の出身者などの人の名前を冠することは、その地域の人達にとって一種の誇りのような気持ちをもたらし、また、その土地の観光振興にも一役買っているようですよ。
日本国内の空港で紹介しきれませんでしたが、実はこのブログで紹介した以外にも「米子鬼太郎空港」という愛称の空港もあります。
日本国内においても今後、新たに人の名前を冠した空港が誕生していくかもしれませんね。

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