空港コードのナゾ:“LAXのXって何だ??
航空券やスーツケースに貼られる荷物タグで見かける「LAX」や「HND」といった3文字のアルファベット。
旅好きな人なら絶対に一度は目にしたことがあると思いますが、これはいわゆる「空港コード」と呼ばれる文字列で、世界中の空港に必ず一つ割り当てられています。
以前、私のブログでも記事を作成していますので、こちらも併せてご覧いただければ幸いです。

世界中に数多の様々な特徴をもった空港が存在しているのと同じように、それらに割り当てられている空港コードの世界も結構奥深いものだったりします。
さて、そんな折、ふとした出来事がきっかけでロサンゼルス国際空港の3レターコードを調べたのですが、ずばり「LAX」でした。
ロサンゼルスといえば、「LA」ですよね。
なので、LAまでは分かるけど、最後の3つ目の“X”って何だろう?
気にしなければ何も気にする必要はない話ではありますが、職業柄どうしても疑問に感じてしまい、、
せっかくなので調べてみることにしました!
結果、この「X」という一文字はLAの地名や施設とは何の関係もない、ただの「埋め字」だということが分かりました。
今は3つのアルファベットで表す3レターコードですが、その昔は2文字だった時代がありました。
その後の航空需要の拡大とともに2文字では足りなくなってしまった為、全ての空港を3文字で表す3レターコードに移行したのですが、この「X」はそんな流れの中で生まれた意外な歴史の産物だったのです。
ということで、この記事では、ロサンゼルス国際空港の3レターコードである「LAX」の“X”の正体を皮切りに、世界各地の空港の空港コードに隠された驚きの由来や、知ると旅が楽しくなるトリビアなどをまとめて紹介していきます。

そもそも空港コードって?――IATAの3文字とICAOの4文字

世界中の空を飛び回る航空機や、預けられた膨大な数のスーツケース。
大空を舞台に世界中を飛び回る現代にあって、そういった数多のものが迷子になることなく確実に目的地へ届くのは、実はすべての空港に「固有のコード」が割り振られていることがかなり大きな恩恵となっています。
そんな航空の世界、空港毎に割り当てられたコードの世界をもう少し深掘りしていくと、世界中の空港にはそれぞれに「役割の異なる2種類のコード」が存在することに気づくことになると思います。
まずは、この「3文字」と「4文字」の使い分けを整理しておきましょう。

空港コードの基本的な情報については前の記事が詳しいので、是非一緒にご覧ください!

旅行者が見るのは「IATAの3文字」/運航側は「ICAOの4文字」
私たちが普段、航空券の予約画面や手荷物タグなどでよく見かけることになる3文字のアルファベットのコード(例:HND、LAX、CDG)は、「IATA(イアタ)コード」と呼ばれるものなんです。
航空会社の業界団体であるIATA(国際航空運送協会)が定める識別子(例:成田=NRT、関空=KIX)で、旅客向けの表示や販売・手配で広く使われています。
アルファベット3文字でも、なんとなくその空港の名前を連想しやすいものが多いので、私達旅行者にとっても馴染みやすいという印象がありますよね。
この記事のきっかけとなっているロサンゼルス国際空港の「LAX」もまさにこの3レターコードです。
- 管理組織: 国際航空運送協会(International Air Transport Association)
- 役割: 主に「商業・事務用」。航空券の発券、手荷物の仕分け、時刻表の表示など、私たち旅行者の目に触れるあらゆる場面で使われます。
- 特徴: 都市名や空港名から連想しやすいもの(HND=羽田など)が多く、利便性を重視して設計されています。

一方で、パイロットがコックピットで入力したり、管制官がモニターで確認したりと、運航や管制の現場で使われるのがICAO(国際民間航空機関)の4文字コードです。
アルファベット4文字でしめされるもので、飛行計画やATC(航空交通管制)での照合に使う“公式”の位置指標で、国・地域ごとに定められた接頭語(日本(本州ほか)=RJ、米国=K、英国=EG など)が最初に付きます(例:RJAA=成田、RJTT=羽田、KJFK=ニューヨークJFK など)
空の旅をしていると、実は全く目に触れないというわけでもないのですが、とはいえあまり見る機会は多くもないかもしれません。
この文字列が空港を示していると分からない状態で見ても、よほど意識していない限りは記憶に残らないかと思います。
- 管理組織: 国際民間航空機関(International Civil Aviation Organization)
- 役割: 主に「運航・技術用」。フライトプラン(飛行計画)の作成や航空管制、気象情報の伝達など、安全運航の根幹を支える場面で使われます。
- 特徴: 地域ごとに規則性を持たせて割り振られます。例えば、日本なら「RJ」で始まり、羽田なら「RJTT」、成田なら「RJAA」となります。LAXの場合は、アメリカ大陸を示す「K」を頭につけて「KLAX」と呼ばれます。

誤解を恐れず言えば、「旅の思い出に残る3文字」と「空の安全を守る4文字」と考えても良いかもですね。

↑あくまでも筆者の個人的な見解です!!
3文字コードが生まれた背景(“2文字時代”からの拡張)
このように、現在では4レターコードと並んで当たり前に存在している「3文字(3レター)」という規格、その歴史を遡ると、航空業界がまだ若かった1930年代に突き当たります。
当時、アメリカにある空港には独自の識別コードというものが割り当てられておらず、国立気象局(NWS)が観測地点毎に割り当てていた「2文字のコード」をそのまま借用していたのだそうです。
その「2文字のコード」とは、ロサンゼルスなら「LA」、ポートランドなら「PD」といった具合に非常にシンプルなものだったみたいですね。
しかし、1940年代に入り航空機が人々にとってどんどん身近な移動手段になり、空港の数も増えていくにつれて、2文字の組み合わせだけでは、どんどん増えていく空港全てに割り当てていくには不足することとなりました。
そこで1947年に、従来の2文字の識別コードを3文字へ拡張することが決定されました。
これにより、組み合わせられる数が飛躍的に拡大し、世界規模での空港毎にコードを設定することが可能になったのです。
アルファベット2文字:26 × 26 = 676通り
アルファベット3文字:26 × 26 × 26 = 17,576通り
この「2文字から3文字への強制的なアップグレード」こそが、今回の記事のテーマである「LAX」の“X”を生み出す引き金となりました・・。

アルファベット2文字でも676もあるのだから、空港だけなら足りるような気もするけど・・??

イメージがわきにくいですから、そう思いますよね。(※筆者も最初はそう感じました)
でも実は全然足りないんです!!
米国だけでも桁違いに空港が多い為、実は全く足りないんです。
米FAAの公式統計で、米国内の空港は19,000以上存在しています!
ここでいう「空港」は一般に開放されていないものも全て含まれますが、一般向けに使用されている空港だけだとしても5,000以上あります。
更に言えば、IATAの3レターコードはアメリカに限定されず、全世界の空港に広く割り当てられるものとなっており、現時点で既に約1.1万件が割り当てられているそうです。

それで、LAXの“X”は何者なのか?
――結論、意味はなくただの“埋め字”でした

記事のきっかけとなったロサンゼルス国際空港の3レターである「LAX」に戻りましょう。
この「LAX」という単語、今や空港を示すコードに留まらず、広く市民権を得ているようで、アパレルブランドのロゴやポップカルチャーにも登場するほどスタイリッシュな名称となっています。
そんなロサンゼルスの代名詞とすらいえる「LAX」。
その末尾をかざる「X」、その正体を知ると、少し拍子抜けしてしまうかもしれません。
冒頭で記載しました通り、この「X」には地名や機能としての意味は実は一切ありません!
それは、急激に進化する航空史のなかで、システムを維持するために打たれた「句読点」のような存在だったんです。
「LA」→「LAX」になった理由は、2文字→3文字となる過程で文字数を埋める為だけに追加された
前章で紹介しました通り、1930年代のアメリカでは現代のような3レターコードは存在しておらず、多くの空港が国立気象局(NWS)が使用している2文字のコードをそのまま流用していました。
その当時、ロサンゼルスを拠点としていた飛行場は、シンプルに「LA」という識別子で管理されていたようですね。
しかし、戦後の航空需要の爆発的な増加に伴い、1947年に空港コードは3文字へと拡張されることになります。
ここで、既存の「2文字コード」を代用していた空港は、ある選択を迫られることになります。
- 全く新しい3文字の組み合わせを考案する
もしくは、 - 既存の2文字を活かし、3文字目に「何か」を足す
多くの大都市空港が選んだのは後者でした。
既に定着している2文字を全く別のものに変えるというのには抵抗があったのかもしれません。
すでに「LA」として定着していたロサンゼルス空港も同様で、既に馴染みのある「LA」というブランドを維持しつつ、3文字というシステム上の空欄を埋めるために最も中立的で、視覚的に収まりの良い「X」を末尾に添えたのだそうです。
つまり、「X」は単なる穴埋めのための文字だったということです。
これが現代の「LAX」誕生の瞬間でした。

LAX公式の見解と“X”に固有の意味がない話
この「LAX」は非常に有名なコードなので、後付けで「XはCrossroads(交差点)の略だ」や、「Xは拡張(Extension)を意味している」などといった都市伝説のような噂が囁かれることも少なくないみたいです。
しかし、空港を運営するロサンゼルス・ワールド・エアポート(LAWA)の公式な記録としてもこの「X」が埋め字であることがはっきり明記されています。
彼らは一貫して、「1947年の3文字化の際、単なるプレースホルダー(場所を確保するための記号)としてXが追加されたに過ぎない」と公式FAQで説明しています。
色々な憶測が飛び交う余地があるのも楽しいといえば楽しいですが、残念ながら公式に否定されてしまっているというわけですね。
LAXの「X」はミステリアスな暗号ではありませんでした。
しかし、当時のエンジニアや官僚たちが「いかに効率よく、既存の名称を壊さずにシステムを拡張するか」を考え抜いた知恵の跡であると考えると、それはそれで味わい深さがあるともいえますね!!

“X”がつく空港はまだある!
――PDX、PHX…アメリカの歴史の名残り達

ご存じの人も多いと思いますが、ロサンゼルス国際空港以外にも、末尾に「X」を冠する空港はアメリカにいくつか存在しています。
これらの空港の「X」についても偶然の産物ではなく、1947年の「3文字化」という荒波を共に乗り越えた、いわば同世代の兄弟のような存在といえます。
気象台(NWS)の2文字識別→3文字化で「X」を足した空港の例
当時、アメリカ国立気象局(NWS)の観測拠点となっていた主要都市の空港は、一様に2文字のコードを持っていました。
そのような中で、2文字から3文字にコードを変換する流れの際、LAXと同様に「X」を付け足すスタイルを採用した代表格といえる空港がこちらです。
空間を埋めるだけの目的とはいえ、なぜ「X」を選んだのでしょうか。
諸説ありますが、Xはアルファベットのなかでも日常語で使われる頻度が低く、他の地名との混同を避けるのに最適だったから、という説が有力なようです。
また、視覚的にも「バツ印」のように空間を埋める役割として、タイポグラフィ上の座りが良かったことも理由の一つと言えるのかもしれません。
経緯はともかくとして、現在となっては、地域住民からもしっかり「The PDX」や「The PHX」といった愛称で親しまれています。
もともと意味のない埋め字だった「X」が、今や都市のアイデンティティの一部となっているというのは興味深いといえば興味深い現象ともいえますね。


“X”以外の付け足しや由来(ORD・MSYなどの歴史由来も)
一方で、「X」を足すという安易(?)な道を選ばず、いや、あるいは選べず?に、歴史の荒波に揉まれ(笑)、「現在の地名とは似ても似つかないコード」になった空港も存在しています。
これらは旅人にとっての「難読地名」のようなもので、その背景にはかつての空港とその歴史が隠されています。
ORD(シカゴ・オヘア国際空港):
世界で最も忙しい空港の一つですが、なぜ「ORD」なのか。
それは、この空港が建設された場所がかつて「Orchard Place(オーチャード・プレイス)」という名の果樹園だったからなのだそうです。
第二次世界大戦のエースパイロット英雄エドワード・オヘアの名を冠して「オヘア空港」となった現在も、そのルーツは3文字の中に生き続けています。

MSY(ルイ・アームストロング・ニューオーリンズ国際空港):
個人的には、あまりニューオーリンズを感じさせない3レターコードです。
これは、かつて空港の地に存在していた「Moisant Stock Yards(モアザン牧場)」という地名の名残ということでした。

MCO(オーランド国際空港):
オーランドなのに「MCO」??
現在でこそ観光都市オーランドですが、かつてこの土地は「McCoy(マッコイ)空軍基地」という場所だったため、その頭文字を引き継いでいるのだとか。

3レターの空港コードには2文字から3文字に変わる歴史の中で、「埋め字で拡張されたもの」の他に、「過去の名前がそのまま化石のように残ったもの」も混在しています。
私たちが何気なく手に取るバゲージタグに印字された3文字は、いわばその土地の歴史を封じ込めた歴史そのものといえるのです。
覚えておくと旅がちょっと楽しい“空港コードトリビア”

空港コードの世界には、まだまだ私たちが知らない「歴史の地層」が積み重なっています。
次に空港を訪れた際、あるいは航空券を手に取った際、隣の人に少しだけ語りたくなるようなトリビアをいくつかご紹介します。
地名と一致しないコードを持つ空港
旅人を最も混乱させるのが、現在の都市名や空港名と全く一致しないコードの存在です。
既に前の章で3つほど紹介しましたが、まだ少しありましたので追加でご紹介していきます。
これらの空港も、「なぜこの文字になったのか?」を紐解くと、そこにはかつての土地の姿が化石のように記録されているわけです。
IAD(ワシントン・ダレス国際空港):
当初は「Dulles International Airport」から「DIA」となる予定でした。
しかし、このコードを手で書くと、既に存在しているロナルド・レーガン・ワシントン・ナショナル空港の3レターコードである「DCA」と似ていて見間違えられるリスクがあるということが分かり、あえて文字を入れ替えて現在の「IAD」になったそう。
安全上の配慮によるエピソードなわけですが、少なくとも私としてはこの3文字だけではどこの空港か全く分かりません。。

EWR(ニューアーク・リバティー国際空港):
NEWARKなんだから「NWK」でいいのでは?なんて思ってしまいます。
ところが、アメリカでは当時、「N」から始まるコードは海軍(Navy)が予約していたそうです。
そのため、Nを使用することが出来ず、Nを除いた「EWR」が割り当てられたという経緯がありました。

一度決まった3レターコードは、今や世界中の予約システムや航空管制データベースと紐付いているため、空港の名前を変えたからといって簡単に変更できるものではありません。
しかし、そんな「システムの慣性」こそが、現在の空港コードをして歴史の証人としているといえるわけですね。

歴史を垣間見れて楽しい反面、ちょっとだけ悲しさを感じるような気もしますね。。
空港コードにまつわるちょっとした話題!
LAXの巨大「LAX」サイン一時撤去で話題!?
ここまで紹介してきたように、今や空港コードは単なる事務的な記号を超えて、その空港や都市を象徴するランドマークの一部としての地位を確立しているといえるのです。
それを象徴付けるような出来事が、ロサンゼルス国際空港で起きていました。
この空港の入り口には、夜になると色鮮やかにライトアップされる巨大な「L・A・X」の文字サインがありますが、2025年の後半(9月頃)にこのサインが姿を消してしまい話題となったのです

ちなみに、空港周辺道路の再配置工事(ATMPのロードウェイ改良)のため、というのが一時的に撤去された理由です。
LAXは現在、2028年のロサンゼルス・オリンピックに向けて渋滞緩和やアクセス改善を目的とする近代化を進めている真っ只中なんです。
歴史を紐解いていくと、最初の成り立ちは「意味のない埋め字」だった「X」が、今や数km先からも見える巨大なモニュメントとなり、撤去されるだけで話題にもなる・・。
何の変哲もない記号がその場所のアイデンティティへと進化したんだなと感じさせられる話ですよね。

ちなみに、このLAXサインは道路改良工事の後に再び設置される予定だそうです。
残念ながら具体的な時期や場所はまだ未定のようですが、次に皆さんがロサンゼルス国際空港を訪れる頃には、もしかしたら再び力強い「LAX」の文字が迎えてくれるかもしれません。
ロサンゼルス国際空港の空港コードはLAX。
— 藤本庸子(YOKO FUJIMOTO) (@YOKOfromLA) September 5, 2025
その「LAX」のサインが、道路拡張の為に取り壊されます。
消えるとは寂しい。
ちなみに、日本人の多くが「ラックス」と発音しますが、正しくは「エル・エー・エックス」です。
[ロサンゼルス 9月5日午前8時28分 曇り20度]https://t.co/LKbwfXxWTu
え!😱LAの玄関口のシンボルだったあのLAXのサイン、取り壊しちゃうの!😭😭
— ふりぼー (@furi22) September 5, 2025
The famous LAX sign that has welcomed visitors to one of the nation's busiest airports for decades is being taken down, with the removal of the letter "X" beginning Thursday night.https://t.co/mlyDIio8o9
まとめ――
“X”はミステリーではなく、時代の産物でした

ロサンゼルス国際空港の「LAX」に刻まれた“X”の文字。
その正体は、かつて2文字だったコードを3文字へ拡張する際に添えられた、実務的で少しお茶目な「埋め字」でした。
こうして成り立ちを紐解いてみると、空港コードは単なる無機質な識別記号ではない!!・・とそんな風に感じてきませんか。
これは、急激に発展した航空史の足跡であり、かつてそこにあった果樹園や牧場、あるいは古い地名を今に伝える「歴史のタイムカプセル」だったんです。
次の旅では、ぜひ「3文字」に目を向けてみてください
次の旅に出て空港へ向かうときは、是非、手元にある航空券や、スーツケースに巻かれた荷物タグを少しだけじっくり眺めてみてください!

「LAX」の字に、1940年代のエンジニアたちの工夫を思い馳せる。

「ORD」の字に、かつてシカゴに広がっていた果樹園の風景を想像する。

名前と一致しない不思議なコードに出会ったら、その裏に隠された「物語」を探してみる。
気にしなければ全く気にしないであろう3レターコードですが、そんなところに隠された小さな発見が旅の楽しみになり、目的地へ向かうまでの時間を更に豊かなものに変えてくれることもあるでしょう。
空港のゲートをくぐり、あの独特の喧騒とジェット燃料の香りに包まれる瞬間、そこには、世界中の都市と歴史が「3文字の暗号」となって、あなたの旅を待っているのです。
さあ、次はどのコードが記されたチケットを持って空へ飛び立ちましょうか??
