空港コードって何?その奥深い世界を垣間見よう

空港

旅行や出張で空港を利用するとき、航空券や時刻表などで目にする「空港コード」。
必須知識とまでは言えないかもしれませんが、空港コードが分かれば、旅程表や乗り継ぎ空港の把握などでスムーズに情報を整理しやすくなる場合もあります。
せっかくなので、この記事では、その空港コードの歴史から仕組み、そして航空業界での活用事例やコードにまつわるエピソードまで幅広く解説し、知っておくとちょっと便利となるようなポイントをまとめてみました。

空港コードの概要

初めに、空港コードの概要について簡単に紹介していきます。

空港コードの重要性

空港コードは、世界中の空港や都市を一意に識別するためのコードで、主に航空業界内で使用されています。
かつてはコードではなく空港名をそのまま表記していましたが、以下のような理由から現在の空港コードが導入されました。

空港コードが導入された理由
  • 国際化と増加する便数
    航空便が国際的に増え、空港の名称や言語が多様化していく中で、誤解や混乱を避ける必要があった。
  • システム管理・予約管理の効率化
    航空券予約システムや荷物のトラッキングなど、短く記号化した方がシステム上でのデータ管理を行いやすい。

現在では、航空券の予約から荷物タグ、運航計画の作成に至るまで、空港コードはあらゆる航空業務の基盤となっており、航空業界において極めて重要なものとなっています。

世界の主要空港のコード

空港コードは世界中の空港に設定されていますので、実際に主要な空港のコードをいくつか紹介していきます。

  • HND:東京国際空港(羽田)
  • NRT:成田国際空港
  • LAX:ロサンゼルス国際空港
  • JFK:ジョン・F・ケネディ国際空港(ニューヨーク)
  • LHR:ロンドン・ヒースロー空港
  • CDG:シャルル・ド・ゴール国際空港(パリ)
  • SIN:シンガポール・チャンギ国際空港
  • DXB:ドバイ国際空港
  • HKG:香港国際空港

このように、空港コードは英語のアルファベットを3つ並べることで構成されています。
ちなみにこのタイプの空港コードは「3(スリー)レターコード」と呼ばれるもので、テレビや新聞など一般的なメディアでもよく登場するため、私達にとって比較的身近な存在ともいえるかもしれません。
上述した通り、このコードは世界共通なので、空港名とあわせて一緒に覚えておくと便利な場合があると思います。

ジョン・F・ケネディ国際空港。「LAX」の文字が見える
シャルル・ド・ゴール国際空港

3レターコードと4レターコード

世界の主要空港に設定されている空港コードをいくつか紹介してきましたが、実は空港コードは3レターコード以外にも存在します。
もう一つの空港コードは「4レターコード」と呼ばれ、その名の通り、アルファベット4文字で構成されています。
これら2種類の空港コードのことを、それぞれコードを設定した機関の名前から「IATAコード(3レターコード)」と「ICAOコード(4レターコード)」と呼んで区別しています。

「IATAコード」と「ICAOコード)」
  • IATAコード(3文字)
    国際航空運送協会(IATA)が策定し、旅客向けや商業的な場面で多用されるコード。
    航空券や時刻表、手荷物タグなどに表記される場合が多いのが特徴で、一般的にはこちらのコードの方が目にする機会が多いと思います。
    例)HND(羽田空港)、CTS(新千歳空港)、FUK(福岡空港)、LAX(ロサンゼルス国際空港)等
  • ICAOコード(4文字)
    国際民間航空機関(ICAO)が策定し、航空管制や運航計画など、主に専門的・技術的な場面で利用されるコード。
    国や地域を示すアルファベットが先頭に付与されることが多く、日本の空港は「RJxx」(例:成田はRJAA、羽田はRJTT)、アメリカは「Kxxx」(例:ロサンゼルス国際空港はKLAX)のように特定のルールがあります。
    旅行や航空などに関係する業界にいる方以外では、あまり身近で接する機会が多くはないかもしれませんね。

空港コードの採用基準

3レターコードと4レターコードはそれぞれ、管轄している国際機関が異なります。
どのようなルールで設定されているのか見ていきましょう。

IATA(3レターコード)

IATAコードは国際航空運送協会 (IATA)が世界各国の空港や空港関連施設等にアルファベット3文字で付与しています。
基本的にはその空港や都市コードに準拠して連想しやすいような3文字が設定されるようですが、なにしろ世界中の空港が対象となっていますので、アルファベット3文字ではどうしても重複してしまう場合もあるようです。

■IATAコードの命名規則

・空港や都市名の英語表記から取りやすいアルファベットを3文字選択
(例:東京 “TOKYO” → TYO、ただし実際には国際線がある空港ごとにHNDやNRTが使用される)

・例外的に地域の歴史や企業ブランドなどにちなんだユニークなコードも存在
(例:福岡空港=FUK、ニューオーリンズ空港=MSY(Moisant Stock Yardsの略))


原則として早い者勝ちというルールに則っている為、文字が重複してしまう場合は、その文字は設定できなくなります。
その為、空港によっては「どうしてその3文字になったのか?」と一瞬首をかしげたくなってしまうものも存在しています。

ICAO(4レターコード)

ICAOコードは国際民間航空機関(ICAO)が、一定の基準に従って1文字目から4文字目まで国ごとに体系的に決定されているのが特徴です。

ICAOコードの命名規則

・最初の1~2文字が大陸や国を表す(例:日本は “RJ” 系列、アメリカは “K”など)

・残りの文字で個別の空港を識別する情報が割り当てられる ※航空管制上の専門的な項目なので詳細は割愛します

航空管制や運航などに使用されていることからも分かる通り、一般的な私達利用客の目に触れる機会はあまり多くはなく、どちらかといえば関係業界内で使用する統一規格といった感じでしょう。

多くは直感で分かりやすいものが多いIATAコードですが、なかにはいまいち分かりにくいものも・・。
日本国内の空港で有名なものを挙げると、

KIX : 関西国際空港 ※ちなみに、伊丹空港は「ITM」
UKB : 神戸空港
NGO : 中部国際空港セントレア ※ちなみに、名古屋空港は「NKM」
KIJ : 新潟空港                     などがあります。

基本的には既に存在しているコードとの重複を避けるのが目的ですが、そのうえでこれらのコードとなった理由もあります。
色々なコードがあるので、興味があれば是非、日本国内の空港のコードを調べてみてください。

空港コードと航空業界

ここからは、空港コードと航空業界の関わりを焦点にして紹介していきます。

航空会社におけるコード利用の実例

航空会社は一般的には自社の運航管理や路線設定、販売促進など、ほぼ全ての場面で空港コードを使っています。
業種によって程度の差はあるかもしれませんが、大前提としての共通単語という位置づけともいえるので、この業界に携わる人達にとっては空港コードの記憶はある意味必須ともいえるでしょう。

  • 運航スケジュールの作成:航空会社はスケジュール表を作成する際、目的地や経由地の空港コードを基に時刻やフライト番号を決定します。
  • マイレージ管理:目的地の登録や搭乗実績の管理にも空港コードが使用されるため、コードの入力ミスは搭乗者のトラブルにつながりやすい点でも非常に重要です。

貨物便と旅客便でのコードの使い分け

空港コードはその名の通り空港毎に割り当てられているコードですから、旅客便だけでなく、貨物便においても不可欠となっています。
旅客便の管理のみならず貨物便などの事業便においても、空港コードが共通言語として使用されています。
貨物の場合、荷物が国や航空運送事業者など複数の関係者を跨いでいくことがあるので、ある意味では旅客便以上に世界共通の空港コードが重要とすらいえるでしょう。

  • 貨物トラッキング:貨物便の送り状(エアウェイビル)に空港コードが表記され、行き先や経由地を管理します。
  • 旅客便との共通利用:空港コードは旅客便・貨物便問わず同じものが世界共通で使用されるため、運送する航空会社や国毎に使用する言語、システムなどが異なっていても、目的地の認識にブレが生じにくく、配送ミスが起こりにくいというのがメリットです。

空港コードこぼれ話

最後に、空港コードにまつわるちょっとしたこぼれ話のようなものをいくつか紹介していきます。

ちょっと面白い3コード(IATA)がある空港

航空券や掲示板でよく目にするIATAコード(3文字)。
どちらかというと私たちにも馴染みがあるのがこの3文字のコードですが、そんなIATAコードのなかでも「一瞬見てドキッとしたり、思わずクスッとなってしまうようなユニークなものが存在しています。
その中からいくつか有名なところをご紹介していきます。

LOL : ダービー・フィールド空港(アメリカ合衆国)

「LOL」は英語圏で比較的有名なネットスラングで「Laugh Out Loud(大笑い)」の略として有名です。
その名の通り、実際に行ってみたら、名前のとおり楽しい空港…かもしれません?

OMG : オメガ空港(ナミビア)

「OMG」も最初のLOLと同じで、英語圏で「Oh My God!」を表すスラングです。
なんてことだ!信じられない!などの驚く気持ちを意味する表現なのです。
オメガ空港自体は小さな空港ですが、インパクトは大きいといえます。

SUX : スー・ゲートウェイ空港(アメリカ合衆国)

「SUX」は英語圏におけるスラングで侮蔑的に「最悪である」、「非常にむかつく」といった意味を持つ場合があるそうです。
実は“Sioux(スー)”という、空港がある都市の歴とした都市コードが由来なのですが、そのインパクトの大きさから論争が起きたこともあるのだとか。
Wikipediaでも記事になっていますので、興味があればご参照ください。

■SUX 論争

スー・ゲートウェイ空港の3レターコードは “SUX”である。このコードは、本来は1文字ずつ発音するものであり、SUXは「エス・ユー・エックス」と呼ぶよう意図されていた。しかし、この3文字はしばしば “sucks”(吸う・しゃぶる)と同じ発音で呼ばれる。しかし、アメリカ英語において “sucks” は俗語としても用いられ、侮蔑的に「最悪である」、「非常にむかつく」といった意味を持つ場合がある。

2002年には、スーシティ市長のクレイグ・バーンスタインは、”SUX” は市にとって恥ずかしいコードだと述べている。1988年と2002年に、スーシティ側はアメリカ連邦航空局に空港コードの変更を請願した。これに対して当局からは、GWU、GYO、GYT、SGV、GAYの5つの変更案が提示されたが、空港の理事会は変更依頼を取り下げた。取り下げの理由として、提案されたコードよりもSUXの方が印象的で覚えやすいといった理由が述べられている。そして、スーゲートウェイ空港は、2007年から “Fly SUX” というスローガンを展開した

Wikipedia「スー・ゲートウェイ空港」より引用
FUN : フナフティ国際空港(ツバル)

イギリス連邦に属する小さな南の島国ツバル。
その玄関口となっている空港にフナフティ国際空港があります。
空港コードは「FUN」!
まさに“楽しそう”な響きで、のんびり南国リゾートのイメージにぴったりかもしれませんね。

FUK : 福岡空港(日本)

お次は、日本人にとってはお馴染みといえる福岡空港。
言わずと知れた国内でも主要な空港の一つですね。
空港コードはFUK。
日本人からすれば、「ふくおか」だからFUKだな!という感じでスムーズに覚えられそうですが、これが英語圏の人からすると一瞬びっくりしてしまうスペルなのでした。
今でも、海外のSNSなどで驚かれていることが稀にあるようです。

PEE : ペルミ国際空港(ロシア)

ロシアの空港にもありました。
ペルミ国際空港という空港で、その空港コードはPEEです。
ぴんとこない方もいるかもしれませんが、PEEとは英語では「排尿」。いわゆるおしっこの意味なんです。
日本人からすればなんとも感じないかもしれませんが、英語圏の人達からすると複雑な気持ちになるかもしれません。
言うまでもありませんが、空港コードの設定はそういうふざけた意図でもって設定されているわけではありませんので、誤解なきようにお願いいたします。

DIE : アッラチャート空港(マダガスカル)

マダガスカル共和くの北部 アンツィラナナにある、アッラチャート空港。
その空港コードは日本人であっても一目で意味が分かると思います。
DIE。
一見してなかなかに強いアルファベット3文字ですね。
ちなみに、「DIE」は地域名「Diego-Suarez(ディエゴ・スアレス)」に由来するものであって、当然、物騒な意味合いで設定されているものではありません。

HEL : ヘルシンキ・ヴァンター国際空港(フィンランド)

続いてはフィンランドはヘルシンキにある、ヘルシンキ・ヴァンター国際空港です。
空港コードはHEL。
これもDIEと同じで、英語圏の人でなくとも意味が伝わりやすいですよね。
都市名“Helsinki”の頭3文字から取っているもので、もちろん地獄(hell)ではありません。
ただ、残念ながら英語を話す人達にとってはブラックジョークのネタになることもあるとかないとか。

FAT : フレズノ・ヨセミテ国際空港(アメリカ合衆国)

アメリカ合衆国カリフォルニア州フレズノにあるヨセミテ国際空港の空港コードはFAT。
英語圏でなくとも意味が通じるコードが連続していますね。
元々「Fresno Air Terminal」という英語名から取った分かりやすいコードなのですが、たまたまその並びが英語の「fat(太っている)」とまったく同じスペルになってしまっているというのが面白ポイントです。

旅の思い出と空港コード

旅好きの人の中には、旅の中で訪れた空港の空港コードが入っているタグを集めたり、シンプルな3文字で洗練されているため、ハッシュタグやアイコンに取り入れてSNSのプロフィールや投稿に空港コードを付けて「自分が行った都市」を表現する人がいます。
おしゃれな感じがしますし、なにより旅通という感じが出ていてかっこよいですよね。
空港コードを認識していれば、こういうちょっと上級者的な思い出作りも出来てしまいます。
空港コードはこんな風に、私たちの旅にも彩を与えてくれる!?かもしれせん。

まとめ

空港コードは、航空業界を支える基盤的な情報要素です。
IATAとICAOという二種類のコードは、それぞれ利用される場面が異なり、旅客向け(IATA)と航空管制や運航管理向け(ICAO)という形で使い分けられています。
また、都市名との対応関係や命名規則を大まかに理解しておけば、目的の空港がどこなのかを簡単に把握し、航空券予約や乗り継ぎ手続きなどをスムーズに進めることができます。

一方で、業界人だけでなくて、旅行を趣味としている人達にとっても、世界各地の空港コードを覚えておくと話のネタにもなりますし、旅先での空港移動や乗り継ぎの際にも役立ちます。
ちょっとしたおしゃれを演出したり、旅通をアピール出来たりもしますから、是非この機会に空港コードの歴史や仕組みに触れてみて、次からの旅のアクセントを一つや二つ増やしてみてはいかでしょうか。

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