空港がない都道府県

空港

久方ぶりに友人達とちょっとした旅を計画している。
近場は結構行ったから、今回は少しだけ遠いところに行ってみるのも悪くない。
思い切って飛行機を使ってみるのはどうだろう?
そう思って、インターネットで観光地を流し見しながら良さそうな場所を探し始める―

このような感じから旅を計画する人もいると思います。
そうこうしているうちに非常に興味をそそられる観光地を見つけますが、そこはまだ一度も行ったことのない場所。
交通手段を検討する際にふと考えます。

「・・空港って日本全国の各都道府県に必ず1つはあるのかな?」

ということで今回は、日本全国各都道府県における空港の設置について紹介していきます。
空港の存在しない都道府県を知っておくことは、旅の計画を立てる際における目的地や交通手段の選定などに必ず役に立ちますよ。

空港の所在地について

空港がない都道府県

最初に結論からいきましょう。
日本国内の全ての都道府県に空港が設置されているということではありません。
空港がない都道府県は次の通りです。

☆☆空港が設置されていない都道府県☆☆

【北海道、東北エリア】
 なし ※全ての都道府県に空港が1つ以上ある

【関東エリア】
・栃木県
・群馬県
・埼玉県
・神奈川県

【中部エリア】
・山梨県
・岐阜県

【近畿エリア】
・三重県
・滋賀県
・京都府
・奈良県

【中国四国エリア】
 なし ※全ての都道府県に空港が1つ以上ある

【九州エリア】
 なし ※全ての都道府県に空港が1つ以上ある 

日本において空港が設置されていないのは全部で10府県です。
それぞれ行政単位で見ると、ほとんどが比較的大都市圏で人口も多いので、空港が設置されていないというのはなんとなく不思議な気もします。

ここで一度、日本地図をイメージしてみてください。
そうすることで見えてくることがあります。
空港が設置されていない府県の位置を日本地図上でポイントしてみると、これらの府県が全て地理的に本州の中でも概ね中央部(関東~関西)近郊にあるということが分かります。
しかし、同時にこれら府県はその多くがいわゆる大都市圏を構成する主要都市級でもあります。
では、主要都市圏ともいえるうえに日本の中核部であるこれら主要府県に限って、なぜ空港が存在しないのか?
その理由は2つ考えられます。
注意いずれも私の勝手な考えです。

1つ目は、飛行機による移動は、ある程度距離が離れている方がメリットがある為。
飛行機は一般的には時速900㎞前後の速さで飛行します。
機種によって前後するものの、概ね新幹線の3倍以上の速さで移動するわけです。
そして、水平飛行する巡航高度は一般的に1万メートル前後。
その為に長い滑走路と専用の施設(空港)が必要となります。
特に本州も中央付近は都市ごとの距離も近い為、近距離間の移動には必ずしも航空機が適さない場合もあるということでしょう。

2つ目は、各都市圏が大きく相互に接続する公共交通機関が充実している為。
空港が存在しない府県はいずれもそれ自体かその近郊に大都市圏を抱えています。
これらの都市は公共交通機関が非常に発達しており、各都市圏を相互に繋ぐことで不自由なく移動出来るようになっています。
その結果、例えば関東なら東京に羽田空港など、関西なら大阪に関西国際空港などが存在していることで、これらの空港がカバーする(繋がる周辺の都市圏)の範囲が広大となるわけです。
埼玉県内には空港が1つもないとしても、羽田空港があれば、空港までのアクセスは整備されているので不便はありません。

空港が設置されている都道府県

次に、ここまでとは反対に、空港が設置されている都道府県と設置されている空港の名前を一覧にまとめて紹介します。
各空港のホームページにリンクしていますので、気になる空港があったらクリックしてみてください。

☆☆空港が設置されている都道府県と空港の名称☆☆
※共用空港(自衛隊等が設置し、および管理する飛行場)は除く

【北海道・東北エリア】
■北海道
新千歳空港札幌丘珠空港函館空港旭川空港帯広空港釧路空港女満別空港稚内空港
中標津空港紋別空港礼文空港※H21~供用休止中利尻空港奥尻空港
■青森県
青森空港三沢空港
■秋田県
秋田空港大舘能代空港
■岩手県
花巻空港
■山形県
山形空港庄内空港
■宮城県
仙台空港
■福島県
福島空港

【関東エリア】
■茨城県
茨城空港
■東京都
東京国際空港(羽田)調布飛行場大島空港新島空港神津島空港三宅島空港八丈島空港
■千葉県
成田国際空港

【中部エリア】
■新潟県
新潟空港佐渡空港
■長野県
松本空港
■静岡県
静岡空港
■富山県
富山空港
■石川県
小松空港能登空港
■福井県
福井空港
■愛知県
中部国際空港名古屋空港

【近畿エリア】
■大阪府
大阪国際空港(伊丹)※兵庫にもまたがりますが、大阪府に記載関西国際空港八尾空港
■和歌山県
南紀白浜空港
■兵庫県
神戸空港、大阪国際空港(伊丹)※大阪府に記載但馬飛行場

【中国・四国エリア】
■鳥取県
鳥取空港美保飛行場(米子空港)
■岡山県
岡山空港岡南飛行場
■島根県
出雲空港石見空港隠岐空港
■広島県
広島空港
■山口県
岩国空港山口宇部空港
■徳島県
徳島空港
■香川県
高松空港
■愛媛県
松山空港
■高知県
高知空港

【九州エリア】
■福岡県
北九州空港福岡空港
■大分県
大分空港大分県央飛行場
■佐賀県
佐賀空港
■熊本県
熊本空港天草飛行場
■宮崎県
宮崎空港
■長崎県
長崎空港対馬空港福江空港(五島つばき空港)壱岐空港上五島空港小値賀空港
■鹿児島県
鹿児島空港種子島空港屋久島空港奄美空港喜界空港徳之島空港沖永良部空港与論空港
■沖縄県
那覇空港伊江島空港粟国空港久米島空港慶良間空港下地島空港宮古空港多良間空港新石垣空港与那国空港波照間空港北大東空港南大東空港

設置される空港の数には都道府県ごとに違いがあることが分かります。
こうしてまとめてみると、空港が多い都道府県であれば、殊更に面積が広大でその広大さから地上移動では時間がかかりすぎてしまう北海道や、周囲を海に囲まれており物理的に地上移動が出来ない沖縄県、空港がない都道府県の場合は隣接する都道府県に空港が設置されている、など、空港の分布の偏りにもそれぞれの理由があることが分かってきます。

空港の数が多い都道府県

単純な数で比較するならば、沖縄県が13空港と一番多く、その次が北海道で12空港です。
ちなみにこの数ですが、「空港」には細かく見ると飛行場や民間・軍事の別などの種類や分類の違いがあり、厳密な比較は結構難しいです。

空港の設置数が多い都道府県を旅の目的地にする場合は、目的地により近い空港を移動経路として設定することで効率的な移動が出来ます。
ただし、上の表を見てもらうと分かる通り、2つ以上の空港が設置されている都府県自体はそう多くもないです。
2つ以上の空港が設置されている都府県の場合でも、そのうち1つは定期便が就航していない空港であったり、あまり規模が大きくない小型機専用の空港である、といったケースも結構あります。
旅の目的地から近いかどうかだけでなく、空港自体の就航路線は勿論、せっかく遠くへ行くので、空港自体も旅の目的地として考えてみるのもおススメです。
空港はその土地ごとに色々な特徴を備えていることが多いので、事前に空港を調べてみて興味を持てた空港があれば、あえて目的地から少し遠くてもその空港を選択するのも楽しいですよ。

さて、日本の空港はその利便性や地理的要因など様々な理由から、全国の都道府県に設置されていることがこれで分かっていただけたと思います。

北から南までこれほど網羅的に設置されている沢山の空港ですが、では、これらの空港を設置(建設)しているのは一体誰なのでしょう。
個人が空港を自由に設置運営出来るのであれば、空港が設置される都道府県の分布にもっと偏りが出て来るかもしれません。
個人が空港を設置することは出来るのでしょうか。

国管理空港と地方管理空港、会社管理空港の違い

日本の空港設置者は大きく次の3つです。

①国
②地方公共団体
③会社

ここでいう「建設(設置)」とは施設そのものを建設することです。
建設(設置)された空港施設を「管理(運営)」するのはまた別の意味ですので、ここでは2つの言葉を区別して使っています。

国が建設(設置)し管理(運営)する空港のことです。
【国管理空港】と呼ばれます。

東京国際空港(羽田空港)、新千歳空港、仙台空港、福岡空港、那覇空港 など

②地方公共団体

地方公共団体が建設(設置)し管理(運営)する空港のことです。
【地方管理空港】と呼ばれます。

青森空港、神戸空港、岡山空港 など

会社

会社が建設(設置)し管理(運営)する空港のことです。
【会社管理空港】と呼ばれます。

成田国際空港、中部国際空港、関西国際空港、大阪国際空港(伊丹空港)

この他に、「特定地方管理空港」という空港も存在します。
これは、国が建設(設置)し、地方公共団体が管理(運営)する空港のことです。
旭川空港や秋田空港、山形空港などが特定地方管理空港です。

これら設置者の違いが、旅などで空港を利用する私たちにとって直接に関係することはほとんどありませんが、普段よく使う空港がある人などは、ふとした瞬間にこれら設置者の違いを思い出してみてください。
意外と普段は気が付かないような点に気が付いたり、いつも目にしていても何も意識しなかったところで何かしら新しい発見がある(かもしれません)。。

空港の設置・管理者が大きくは3パターンであることが分かったところで、最初の疑問に戻ります。
果たして空港を個人で設置するということは出来るのでしょうか。

空港の構造や設置

個人でも空港は建設(設置)出来るのか

個人で空港を設置することが可能なのかどうかについては、関連法令なども確認してみましたがはっきりとした答えは得られませんでした。
引き続き調査を行っていきたいと思います。
新しく分かったことがあれば適宜記事の追記修正を行っていきます。

ということで、ここから先は私個人の勝手な推測ですが、

「個人による空港設置(建設)は不可能」

というのが一応の結論です。
まず、空港の設置は空港法(会社管理空港は各設置法)に基づいて設置者と運営者を定めている為、そもそも認められないように思います。
そのうえで、更に根拠をあげるとすれば次の通りです。

①空港は公共の用に供する社会インフラの一部である為、個人による設置には適しない。

空港は公共の建設物であって、個人が建設し運営するには相応しくないというのが一つ目の理由です。
高度に公共性の建設物であることは、国交省の「空港の設置及び管理に関する基本方針」に見ることができます。

空港は、単体では機能し得ず、他の空港と航空機によって結ばれ、路線が構築されて始めて機能するという意味で「ネットワークの基盤」であるという特性を有している。
加えて、空港は設置された地域の中においても孤立して存在するものではなく、、空港周辺地域の様々な事業者、地方公共団体等の存在に支えられ、各地との移動・交流を行う基盤ともなっているという意味で「地域における拠点」としての機能を担っている。
さらに、空港はサービス提供の場であり、「サービスの拠点」としての機能や、不法入国の水際阻止、震災時の輸送拠点となる等「安全・安心の拠点」としての機能も有しており、これらすべての機能を総括して、経済社会活動の基盤、世界に向けた玄関・窓口、物資の輸出入の拠点、観光を含む交流の基盤、地域活力向上の基盤等の「公共インフラ」としての機能を果たしているものである。

国土交通省「空港の設置及び管理に関する基本方針」より一部抜粋

ところで、会社管理空港という民間の営利企業が設置(建設)している空港があります。
そこから考えると、法人が認められるならば個人による設置も認められるのではないか?という気がします。
しかし、現在存在する会社管理空港は、会社による空港設置(建設)を法律で定めるという経緯があり、法人が自ら希望して空港を建設したというものではないように見えます。
つまり、法律で定めて法人格が設立するということでしょうか。
このあたりについても今後更に調査していきたいと思います。

よほど特殊な事情で国などの公共団体が、個人による空港設置(建設)を認めるといったことがない限り、個人が自分の意志で空港を建設したいということは認められないと考えます。

②空港施設の建設に必要な条件や運営にかかる費用など個人による対応は極めて困難。

旅客取扱施設(ターミナルビル)などの建物はともかく、滑走路や誘導路、航空灯火などは厳格な基準が定められており、建設に必要となる費用は膨大です。
空港の必須設備の一つである滑走路などは尚更で、就航する航空機によって変わってくるものの、いわゆる拠点空港レベルともなると2500メートル前後の滑走路が最低でも必要となります。
2500メートル級の滑走路を建設する為には当然それを上回る広さの広大すぎる土地が必要となってきます。
更に言えば、大量の航空灯火の電気料やその他の人件費、維持管理費など日々の運用コストもとにかく莫大です。
例えどれほど多額の財産があったとしても、個人の財力で空港の建築から管理運営~維持までこなすことは現実的であるとは言い難いです。

空港運営に必要なお金

空港は建設すればそれで終了、というものでもありません。
建設した後もその性能や品質を維持する為、国が定める統一した一定の品質基準を維持し続ける必要があります。
それにはどうしても多額の費用がかかってきます。
その為に必要なお金(運営に必要なお金)は一体どれくらいなのでしょう。

空港は様々な主体が空港内の施設をそれぞれ別に運営していることが多い為、一概に「空港」としての収支を出すことは難しいですが、国交省が「指標」として主要空港についての収支を公表しています。
その資料によれば、東京国際空港(羽田空港)の営業費用は概ね1,700億程度。
公表されている空港の中では少額な部類に入る丘珠空港(札幌)の営業費用でも7億程度です。(※令和3年度)

(国土交通省HP)国が管理する空港(コンセッション空港を除く国管理空港・共用空港)の空港別収支


空港の規模にもよりますし運営する施設によっても異なるとはいえ、概ねの規模感のようなものは分かります。
やはり、個人の財力でなんとかなる世界ではないですし、そもそも個人で設置するメリット(旨味)が私には今のところ見えてきません。
とはいえ、空港ではなく、個人のプライベートジェット機専用の小規模な飛行場などであれば話は変わってくるかもしれません。

まとめ

旅にでよう

日本においては空港の存在しない都道府県が10も存在しているということが分かりました。
全ての都道府県に必ず1か所空港が存在している、という根拠のないイメージがありましたが、実はそうではなかったわけです。
同時に、空港の設置されている都道府県を場所で見ると、北は北海道から南は沖縄と、首都圏から距離が離れるほど空港ネットワークは充実されていることも分かりました。

毎日家と職場の往復だけで日々が過ぎていく。
そういえば最後に遠出らしい遠出をしたのはいつだったかな・・・
なんてことを、帰り道の電車の中で窓に反射する自分自身の顔や流れていく風景を見ながらふと感じることはありませんか。
私もふとした瞬間にそんな思いに取りつかれることが多々あります。
まだまだコロナの猛威を無視することは出来ませんが、しっかり対策を行うことを大前提として、次のそのまた次くらいの休みに、まだ行ったことがない少し遠めの土地の空港を目掛けてちょっとした旅を企画してみるのもいいのではないでしょうか。

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